Excite~The Moyurupen! Street Journal

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「はい、こちら2020東京五輪」
"Yes, this, 2020 Tokyo Olympics"


<登場人物>

・僕:中山正輝
・僕の妻:恵理子(野猿系)
・僕の長女:千鶴(野猿系)
・同僚:船橋真吾(イケメン系:代表権のないくろくま広告社社長)
・船橋くんの妻:美智子夫人(ハイソ系:くろくま広告社会長<実質的な経営者>)
・船橋くんの娘:絶世の美女:みどり君
・銀座マネキン嬢(昼は銀座通りのマネキン嬢、夜は銀座のサロン嬢:ユキ、ナオミ、サトミ、ミキ他。全員国立大出身のインテリ)
・美大の後輩:安藤(今東光似の毒舌家)
・くろくま広告社元会長:広瀬弘文(美智子夫人の父)
・銀座の若旦那衆他
・霞ヶ関官僚、国会議員他
・その他随増殖・・・


character>

* I: Masaki Nakayama.
* A wife: Eriko
* Eldest daughter: Chizu
* A colleague: Shingo Funabashi (the next president)
* Colleague's wife: Mrs. Michiko
* Colleague's peerless beauty: Mr. green
* Miss Ginza mannequin: Yuki, Naomi, Satomi and Miki and others
* Junior of art school: Ando
* Advertising firm chairperson: Hirose Kobun " (Mrs. Michiko's father)
* Young master other ones in Ginza
* Kasumigaseki bureaucrat and congressman and others
* The hokazui multiplication...





第一章 透明慕情(プロローグ)



 みどり君が都内の私立中学に入って以来、毎朝、駅ではいつも一緒になる。エリートの舟橋君と僕は勤務先では同期入社でもある。彼とは銀座の広告代理店までは通勤が一緒になる。しかし近々彼は役員にともっぱらの噂だ。彼との電車通勤も、そろそろお別れのようである。そういう縁があって、千鶴と彼の長女みどり君も、四谷の学校では中学から同じである。娘の千鶴も、みどり君とは朝の時間帯だけは一緒になる。
 まだ、午前六時台というのに、駅の中はいつも混みあっている。同じ発車時間と同じ白線の位置。通勤・通学客で駅のホームでは大抵、いつもと同じ顔ぶれになる。
 電車を待つ間、乗降客とは別段話をするわけでもない。今日はどうも気が乗らない。体の調子も悪そうだし、仕事を休みたい。勝手にそう思いはじめている。僕の性悪な癖は直りそうもない。そうこう思い込んでいるうちに、仮病のつもりがほんとに体調も悪くなってくる。悲哀や哀愁を放つプラットホームの人の波。僕は駅でそれを肌で感じとる。僕はその人たちと不安な時代を泳いでいる。僕は妙に思い込みが強いようだ。千鶴や妻恵理子にも言われる。僕は大人びた人間を見ると、うらやましく思える。よくもまぁ、年齢不相応な中年になったものだ。おまけに風変わりなご主人様ときている。それは今に始まったことではない。妻はそれを承知で僕と一緒になったのだ。世間が厳しいことを知らない純情無垢な貧乏画学生を口説き落として、親との縁を切ったほどだから、妻も引くに引けないのである。貧乏なくせに生活感がまったくないと見られている。そこが気に入られたのだろう。いわゆるせこせこしていない。おおらか。悪く言えばいい加減で存在感がない。しかし母性本能をくすぐる。癒し系。未だに彼女は実家の両親とは仲が悪い。近頃僕は開き直ったせいもある。内心とは裏腹に、僕の表情はノー天気に見えるようだ。最近、彼女たちが僕に腹が立つのも理解できるようになった。
 すみません、ちょっと火を貸していただけませんでしょうか、などと、プラットホームの指定された喫煙所で煙草をふかす。煙を見る一瞬は、僕には至福の時なのである。同じような人を見ていると、僕は何となくホッとしている。 嫌煙者の怖い視線は、青いレーザービームのように思える。それが肩身の狭い喫煙者との間に沈黙のわだかまりを生んでいる。家では禁煙宣言をして三年にもなる。家で彼女たちと顔を合わすときは、喫煙のきの字も表には出さない。表向き意志の固い主人さまのようだ。だが、彼女たちには、喫煙の罪状がばれているかもしれない。言葉の節々で勘ぐっている様子が顕著になっているからである。それでも僕はしらを切る。今では臭いのしない軽いタバコが流行っている。外で吸い過ぎたときは、臭い消しのためによく居酒屋に行き、焼鳥やニンニク入りの料理をよくつまむ。彼らは僕らを罪人の群れとでも言いたげである。人の目をはばかる喫煙者同士には、妙な連帯感が発生する。僕はその真っ只中にいる。そういう緊張感を僕は意外と楽しんでいるのである。
 単純な話なのだが、プラットホームは僕にとって一日のスタートラインになっている。彼らの表情には疲れた生活感がある。僕にはその哀愁がなんとなく安堵感につながるのである。
 私服通学のみどり君は、中学入学時から僕とは顔なじみで、思春期の身体の変化が手に取るように伝わってくる。余計なお世話だが、みどり君の家ではもうお赤飯でお祝いでもしたのだろうかとか、男友達は出来たのだろうかとか、勉強やクラブはうまくやっているだろうかとか、僕は彼女の事が気になっている。みどり君はもう高校生になった。時が経つのは早いものである。
 舟橋真吾君と僕は同期ではあるが、今では彼は雲上の人となった。だが、仕事を離れればごく普通のつき合いである。入社してからは、もうかれこれ二十年近くにもなる。化粧品会社でエリートの彼は、もはや最高責任者へ手の届く位置にある。彼の細君は会長の姪にあたり、将来は約束されたようなものである。次期社長の椅子は彼のすぐ目の前にある。派閥争いにも勝利した模様だ。明らかに社内の中では、彼への嫉妬心が膨らんでいる。近々舟橋君も社長になったら、運転手つきの車で通勤するのだろう。そういう噂も多く流れるようになった。
 だが、僕だって負けてはいられない。肩ひじ張ったつもりで、目下窓際族のエリートと意気がってはいる。自然な立ち回りを装っても、決して自然体ではない。だから、いつもやることなすことが、空回りをしている。自分自身が面白おかしく見えることがある。しかし正直言って、僕は時折心もとない。以前、会長の秘書と仲良くなったはずみで、彼の機嫌を損ねてしまったのだ。おそらく会長は自分の女に悪い虫がついたと、勘ぐってでもいたのだろう。会長に睨まれた僕は後がない。僕は悪い虫がどっちかわからないまま、次の日には早速、営業部から資料室へと栄転させられた。たしか舟橋君も、その美人秘書とは仲が良かったはずである。
 銀座の某所で時折、二人が密会しているところを篠山が見ている。舟橋君は以前からプライドが高い。自分からは悩みを人に打ち明ける等ということはなかった。だが、最近は弱音を吐くようになってきた。僕はいつも聞き役である。実質的に、彼は婿養子のようなものである。眼に見えないところで、美智子夫人の手のひらで踊っている。そういう鬱積が時折僕に向けられる。 
 下手をすれば、舟橋君もそのうち、社長抜擢どころか、社内ではお蔵入りとなるかも知れない。仕事上の地位など一寸先は闇なのである。舟橋君は細君にはまだバレてはいないから、しばらくは安泰だろう。しかし、油断は禁物である。貞淑で潔癖症であるかれの細君は、女帝になれる資格は充分である。気まずいことが発覚すれば、舟橋君の命は危うい。これでも、互いに同じ年ごろの娘を持つ親なのである。十代の少年が急に三十年後に飛来したような不思議な感覚を抱くことがある。初恋の味がなつかしい。でも、また味わえそうな、そうでもないような、不安も存在している。みどり君に対して、十代のような清純で不安定な自分になれるだろうか。ふわふわとした涼しい空気が体の中を突き通した。背筋にもぐんと力が入ってくる。
 資料室は、以前から妖怪の凄む動物園と名を馳せていたところである。完全に本流から外れた仲間たちは、意外と面白いキャラクターばかりである。これじゃ、みんな使い物にならないだろうなぁ、と以前から思っていた僕も、いざ来てみるとやっぱりそう思ってしまう。自分のことも含めて。
 資料室は二十人もの所帯だが、毎日結構楽しくやっている。何処で勘違いをされたか今もって僕には分からないが、資料室のスタッフたちは、みんな自分は特別な存在だと思っているらしい。資料室特有の暗い影などみじんも感じないのである。鬱病になるどころかいつも過激な躁状態で、関連会社の社員には、時折華の営業部隊と間違えられることもある。確かに自己陶酔と個性の強すぎる集まりだから、一般社員たちからも煙たがられてはいる。一般社員のみんなは、腫れ物には触らないように、エサをあげないように、という視線を送ってくる。でも僕にとっては快適な場所なのである。
 出勤簿は判を押すだけ。タイムカードはなしで、自己申告。日中の資料集めは何処へ行っても自由。そのまま理由をつけて、競馬、競輪や映画、パチンコなどにいき、資料探しだといって嘘の連絡をしても、立派な仕事になる。つまり、彼らに言わせれば自由な部署ということになる。資料室の男女の比率は半々位である。女はみんな独身で、男との噂はこれまで皆無だという。部署の男達は彼女たちをあっ、女の子だ、などと絶対認めようとしない。二十代や三十代までの濃すぎる化粧までは、まだ許せる。しかし、その上の熟女となると男達は皆恐怖におののく。
 彼女たちの化身した形相と、年期の入った縮れた髪。若い人向けのアイシャドウや茶髪などの真似をする。やめておけばいいものを、そのほうがいいよ絶対に、という視線は男達の間では挨拶代わりになっている。そういう面では結構気をつかうが、あとは余計な気は一切使わない。社交辞令でも褒め言葉などは吐いてはいけない。異性とみてはいけないのである。各自が自分の身を守るために。そういう無言の掟があった。間違って出そうものなら、たぶん生きて家へは帰れない。
 男たちは半数は既婚だが、長続きしているのは僕と篠山だけである。ほとんどがバツ一からバツ三のうちに入る。資料室の世代は二十代から五十代で幅がある。仕事がヒマな上に気楽な毎日は、遊び人風な僕をさらに勢いづけている。妻には広報室で采配を振るっていると嘘をついている。総務部で刷り上がった名刺を、勝手に作り替えて妻には立派にみせる。そういう小心さで、僕はかろうじて、心身のバランスを取っているのである。
 みどり君のあどけなかった顔と身体が、少しずつ少女から大人の女へと変わっている。その過程を垣間見るのは僕だけの、楽しみの一つになっている。
 美貌と知性を持ったみどり君には、早く妖気な女へ脱しようとする焦りを感じることがある。僕と彼女とは中学入試の試験日で初めて顔を合わせた。僕は年甲斐もなく、あどけない少女に妙にわくわくしていたものである。妻などにはそんなことは言えるわけがない。ロリコン趣味だと罵倒されるのがオチである。だが、僕のみどり君への慕情は、少しずつ芽生えつつある。
 みどり君も僕を意識しているのが分かるようになった。油断は大敵。好事魔多し。白昼の死角。少女への倒錯。僕はそんなことを、とめどなく歩きながら考える。
 僕はみどり君と視線をあわせると、彼女の心臓のなかに入っていくような、全てを許してもいいというような、雰囲気になってしまうのだ。軽はずみな男女の関係という意味ではない。素直な相手への想い。それだけである。初めてみどり君を見たとき、僕の気持ちの中では初恋のようなオアシスが、年甲斐もなく出来ていたのである。それはみどり君に対する僕の身勝手な、陶酔磁場であるには違いない。要するに僕は少女を見初めてしまったのである。みどり君もその時は、たしかそういう眼をしていた。あとで知ったことだが、みどり君の初恋の相手が僕だったのである。
 日頃みどり君とはあまり話し合うこともなく、時折学校の行事のとき、僕はみどり君に会えるというだけで、心が弾んでいた。文化祭では、みどり君の所属するマンドリン・ギター班をもう三年も聴いている。マンドリンの演奏もうまくなっていた。発表会前の編曲や曲選び・練習は大変らしい。妻と一緒に大講堂の席には座るが、僕はみどり君のことしか見えていない。妻に話しかけられても上の空である。みどり君とはいつもアイコンタクトで会話をする。最初のころはよく分からなかったが、近頃は目で分かるようになった。妻などそういうことは知る由もない。千鶴は器械体操班に所属している。妻は公開練習を見に行くといって中座したのにも全く気付いていない。軽く会釈をするだけなのに、僕はみどり君と秘密の世界を、共有している錯覚に陥ることがある。そんなことは死んでも人に話すわけにはいかない。自分の事は自分で悩むしかないのだ。少女への淡い想い。世間的に言うと近頃僕はかなり、アブナイおじさんになった様な気がする。僕にも同じ年頃の娘、千鶴がいるというのに。
 みどり君と千鶴はプロテスタントの同じ学校に通っている。だが、どういう訳か、彼女と千鶴は当初からあまり仲は良くないようである。みどり君からは誘いの電話は度々あったのだが、千鶴のほうはその都度理由をつけて避けようとしている。これまで一緒に通学したことはない。男には分からない女の領分でもあるのだろう。たしか、中学入試ではみどり君はトップの配点での入学組のようである。中学の受験塾では、いつもベストテンに名を連ねていた。千鶴のほうはと言えば、目を覆いたくなるような成績で、塾の担任の話ではとても無理と言われていた。
 中学受験は競争が激しい。偏差値がべらぼうに高くても、それだけ、憧れの志望校に入りたい少女達が、周りには結構いるということなのだろう。受験前は火事場の馬鹿力と運を見方にするべく、妻と千鶴はよくげんを担いでいた。早朝、二人でよく散歩をしていたが、飼い犬を連れ添っている老夫婦のあとを付け、御犬様がウンチをこぼしたら汚れた運動靴でそれを踏む。よしこれで、少しはウンがつくわと、たわいもない事を朝の食事中に話すのである。そんな中では食事が咽を通るわけがない。そういうことが、受験一ヶ月前から始まっていた。その間僕は朝食抜きで、出勤する羽目になる。
 みどり君の父方は見た目は野獣系のようだ。母方は絶世の美女系である。舟橋君の奥方やみどり君をみればすぐ分かる。
 僕は四十代のニューハーフ系である。妻はどちらかといえば野猿系に入る。千鶴は僕の美形の遺伝子はあるものの、見た目は絶対に母親似で、家ではあまり女を感じることはない。母子共に少しは上品度が上がればいいのだが、いっこうに上がる気配はない。Jリーグの試合では二人はいつも顔中に絵の具を塗って周りのサポーターたちとよく出かける。僕がそのままでも結構さまになるようだよ、と冗談交じりに言うと、その日の僕は食事には絶対ありつけない。 
 そういう力関係も存在するので、最近言葉には気をつけている。千鶴はお転婆と男勝りを掛け合わせたような性格で、家の中はいつも騒々しいのである。妻もそれに輪をかけていつもじっとしていることがない。時折僕は、我が家はレンタル家族のような気がしてくる。
 千鶴はたぶん最低点での補欠組である。いまだに、みどり君にはかなりのコンプレックスをもっている。松竹梅の松の下というところか。親の方も多分無理をしてもやはり松の下辺りだろう。カエルの子はやっぱりカエルなのである。 
 あとは千鶴本人の突然変異を期待するしか道はない。舟橋君は梅の中ぐらいか。千鶴は他の志望していた学校では、全て不合格。仕方がないから近くの公立にでも、お世話になろうかと手続きしていたときだった。制服も用意するものも全てそろっていた。
 ところがその日の深夜に、みどり君の学校から連絡が入る。補欠の繰り上がりで対象になったので、中山正輝様のお嬢さんを是非当校へのご入学いかがですかと電話が入った。僕はよくあるイタズラの電話だと思い、もう結構ですからとガチャンと電話を切ってしまった。当時、嫌がらせや勧誘の電話がめっぽう多くなっていたときであったからである。僕も酩酊して帰宅したばかりだった。家族のみんなも完璧に諦めていた。
 風呂場から急いで電話に出ようと、裸のまま廊下を走ってきた千鶴は、僕を不審な男と見誤ったらしく、大声を隣中にだした。駆けつけた隣家の住人達も、目のやり場が無く、しばらく唖然と立ちすくんでいた。千鶴は陰毛や膨らみ始めたおっぱいなどを、隠す恥じらいなどはまったくない。それどころか自分は女じゃない、というような千鶴の立ち振る舞いに、さぞかし彼らは背筋が筋が寒くなっていたことだろう。
 僕も娘も少しは妻に似てきたな、と思うぐらいそっけなさを顔に出す。みどり君とは全く違うのである。僕は千鶴に急所を思いっきり蹴られた。僕は千鶴には深夜の電話に出たことを言いながら失神していた。千鶴は何で学校断わったのと泣きじゃくる。千鶴はその出来事以来、僕には他人行儀になっていた。生理がいつから始まったのかと、親として聞ける温和な家庭ではないのである。もし、そんなことを少しでも口になどしたら、必ず刑事事件が勃発する。翌日の朝刊の社会面ではしっかり名前が載るだろう。
 三日後、電話のあった学校から、入学手続きの書類が送られてきた。千鶴は、たしか父が入学を断ったのでは、と学校に確認したところ、僕が、それで結構です、と言ったというのである。
 私は勘違いをして、結構ですといったばっかりに、それまでは千鶴や妻と会話が途切れてしまっていた。魔の三日間。このときは日本語の深い曖昧さと有り難さが身にしみていた。
 なにはともあれ、千鶴は補欠だけれども、憧れの学校に入学できた。入れる確率がほとんどない位の学校に入れたのだ。
 みどり君と千鶴には、何処かに目に見えない女の確執が存在する。たまには駅までは一緒にと、僕も娘にせがまれることがある。ただし、条件付きである。千鶴は僕には何時も他人のふりをしてと言われる。話しかけてもいけない。千鶴は、一種風来坊のような、怪しい親父にはいつも辟易しているのである。僕を二代目寅さんとでも、学校でも言いふらしているようだ。みどり君もチラッと、そんなことを口を滑らしたことがある。義理と人情の様なものが娘でも少しはあったのだと、僕はただ喜んでばかりではいけないのである。駅についた途端、娘から内緒で臨時の小遣いをせがまれる。それに呼応する僕も僕である。
 バブリーで男勝りの我が娘に女を感じろと、いうのはどだい無理な話しなのである。千鶴に女の魅力を感じるまでは、かなり時間がかかりそうである。妻の真智子もそう感じているはずだ。




第二章 2020東京オリンピック開催決定


 時が過ぎるのは早いものだ。船橋君の自慢の娘、みどり君は国立の女子大を首席で卒業し、わが娘の千鶴は大学を諦めて文科省の傘下の日本スポーツ振興センター(JSC)で働いている。みどり君は都庁に入り、2020東京オリンピック開催決定後、オリンピック準備委員会のメンバーとなり、日々忙しそうである。このところ、新国立競技場の建設費・デザイン、エンブレム盗作疑惑問題やらですったもんだしている様子だ。いまのところみどり君も冷静さを保ってはいる。が、いつ、フラストレーションが炸裂するかは分からない。千鶴だって、天下りの団体でこき使われ、不満たらたらの毎日なのだ。妻の恵理子は我関せずと、絵本作家のイバラの道を歩いている。船橋君は広告代理店の社長になり、僕は細ぼそと小説家を目指して、ボランティアをしながらの毎日だ。だから、我が家は、千鶴が生活の大黒柱となる。彼女の機嫌をそこねると家中大戦争となるのだ。船橋君は僕とはエンターテインメントへの志向が同じで、個人的なグルメの取材に誘ってくれている。貧乏人の僕にはありがたいことだ。妻恵理子は十年前に乳がんを患い、治療費も重くのしかかる。船橋君には時折温かい支援も受けているが、そのうち印税でも入ったら、思う存分恩にむくいたいところだ。まだまだ道は遠いが、継続こそ力なりと、自分には言い聞かせていいる。船橋君も励ましてくれるので嬉しくもなる。これは誰にも言えないことだが、銀座のマネキン嬢たちと会話する特技もあるので、悩んだときは彼女たちの助言をあおぐこともある。マネキン嬢が話すわけでもないのに。やはり、僕は正真正銘の変わり者なのだ。


 大変なことになった。船橋君がトップである広告会社と取引のあるデザイン会社が、盗作疑惑で混乱しているらしい。彼のことだ。結構信義を重んじる性格で、誰に対しても面倒見がいいから、普段は絶対他言はしない。僕にもだ。だが、今回だけは、五輪のイベントと言う国際的なものだけに、無名の作家の僕にも相談には来る。言いたいことを何でも話し合える仲なのである。男同士の変な友情。今日は表参道のハワイアン・コーヒー店で待ち合わせた。この店に入ると、コーヒーの香りがするアロマの別世界だ。ほとんどがうら若き女性たちだ。こういう店はあまり人には紹介したくない。ハワイ通の船橋君の紹介なのだが、本場の良質のわき水を使ったコーヒーは格別である。店員さんも感じはいい。原宿には合っている。船橋君が来るまで、先にコーヒーを嗜む。息を切らしながら彼が来た。
「中山、千鶴お嬢ちゃんはどうした?みどりから聞いたんだが、JSC大変そうじゃん。エンブレム制作者の佐野君が盗作疑惑でさ。ベルギーの劇場からクレームが来ててね」
「それは、みんな知ってるよ・・・」
「彼の言うには僕は知らないが、スタッフがやったかも知れないので調査中。内部のものがやったにしても、全部僕の責任。でも、すぐ認めるといろいろと大変なので。船さんTV局に付き合ってよ~、って、さっき終わったところ」
「サントリーも大変そうだね~」
「良い解決方法でもあればねぇ、いいんだけどさ。スタッフの盗用認めたようだ。そうだ、おまえに頼みがある・・・」
「そうくると思ったよ・・・。相談してみる・・・」
僕が相談する相手とは・・・。あまり人には言えない。。。



 このところ、みどり君が毎日タクシー帰りだという。JSCが文部科学省の下にあり、お互い不信感がたかまっているらしい。新国立競技場の計画でもすったもんだしているし、五輪のエンブレム盗用疑惑でベルギーのデザイナーがIOCに提訴したことから、差し止めになる公算が大きいというのだ。その劇場はベルギーの王室と関わり合いがあるという。ましてや、裁判はベルギー国内である。勝ち目はない。IOCでもベルギーに右ならいという可能性もある。見切り発車の五輪エンブレムは既に、大量のギャランティが発生し、オフィシャルスポンサーも企業広告で使っていることから、やり直しは、どういう影響を与えるか心配だ。五輪は大手の広告会社電通が窓口になっているらしい。そこの社員が五輪組織委員会のメンバーで、クリエイティブディレクターとしての地位である。にもかかわらず、窓口である彼が、佐野アートディレクターに発注。その佐野君に盗用疑惑が拡散。佐野君を採用した責任はクリエイティブディレクターにあるわけなのだが、いまだに釈明の会見はない。胴元の電通がするわけはないだろう。それだけ、広告の業界は魑魅魍魎としているのである。なんでもありの世界。だから、第三種郵便不正の企画を企業に出してしまう、モラルのない世界も確かに存在する。都庁の五輪準備委員会のスタッフであるみどり君は船橋君の一人娘なのだが、彼の細君は実質的に社の会長職であることから、日々多忙で帰宅してもいない時が多い。父である前会長の実家(吉祥寺の豪邸)から黒塗りの専用車で出社の毎日だからである。ということから、船橋君は社長でありながら決裁権は細君ということになる。だから、僕とは物理的な自由な時間はいくらでもある。要するに、細君のサポーター、入り婿のようなものだ。船橋君は大学では優秀だった。ぼくとは全く違う。だが、日々の苦労は僕のほうが優っている。と、僕はそう思わないと気負けする。しかし、生活感を一切人に与えない。50代になっても独身貴族に見られる所以である。本質的にはいわゆる負け犬の近吠えである。懐は大きいが気が弱すぎる。でも、なんでも体当たりで臨むから、はたから見れば、感動を与える得な性格なのだ。家計は苦しくても裕福に見られる。いや、そう言われれば、損な人間かも知れない。損な性格といえば、佐野君の方が上かも知れない。船橋くんから連絡が入った。月に二回は彼に誘われて、エンターテインメントレストランの取材に同行している。もうかれこれ、五年くらいになるから、かなりの数に上るが、彼と話していると楽しくもあり、時にはアドバイスもしてくれる。頼もしい元同僚(以前僕が働いていた広告会社)である。水道橋の東京ドームに行く途中、MLBカフェで落ち合う予定だ。以前は、ベースボールカフェといって、MLBびいきの日本人が経営していて、テレビでも紹介されたのだが、最近米国のMLBカフェという大リーグ専門のレストランになったばかりである。早い話、米国本土の直営店になった。最初のころは、大賑わいで評判だった以前とは違い冷たい雰囲気だったが、経営者側も察知したらしく、いまでは、以前と変わらない雰囲気で客足も上々のようである。MLBカフェガールズの人気も上がっている。サービスもよく、彼女たちもいつメジャー化するかわらない。


 水道橋のMLBカフェに来る前に、銀座のマネキン嬢達と会ってきたが、彼女たちはみなインテリで、世の中へのコメンテイターとして僕には映ってくる。
「マッサン、こっちこっち・・・」
「ユキちゃんじゃないか。しばらくダネ。みんな元気?」
「元気は元気だけれど、みんなカラ元気なのよ」
「どうしてだい?」
「だってさ、2020年のオリンピックがねぇ。人間さまはどうしちゃったの?」
「ユキ、あまり人間には関わらないほうがええよ。あたいたちが、いくら言っても、むだやん。やめとき・・・」
「ナオミのゆう通りかもね。でも、言うだけならいいじゃん。表現の自由、言論の自由はマネキン嬢にもある・・・」
「そやそや、年金もな・・・」
「黒田総裁は月に50万ももらえるんだって?年収4000万円」
「あたいも欲しい、背も欲しい、男も欲しいし、夢も欲しい・・・」
「新国立どうしちゃたのかしらん。最初の案ではダメなの?」
「お金がかかりすぎるんだってさぁ・・・、サトミはどう思う?」
「あのね、東京ってさ、無機質な感じじゃん。そういうところに、あの、デザインは良いと思うよ。開閉式のスタジアムがアピールで成功したところもあるらしいから」
「でも白紙撤回だって・・・・」
「うっそー、信じらんない~~~~」
「電通・博報堂、役所、ゼネコンの利権が絡んでいるから、こういうことになるのよ」
「そうだ、そうだ、ソーダ―割・・・」
「つまんない、座布団もっていけ・・・・」
「そんな・・・。犬に向かって、てめぇら人間じゃねぇや、って言うのと同じよ・・・」「話がよくわかんない・・・・」
「ミキはいつも真面目ね。そういう子がいないと、このマネキン嬢の達の収拾がつかない、さすが、チーママ候補だね・・・」
「佐野五輪エンブレム、どう思う?」
「気持ち悪い」
「暗い」
「夢を感じない」
「希望が持てない」
「オリンピックとパラリンピックの差別化」
「配色がナチみたい」
「七色を使ったほうがいい」
「エンブレムは全員参加で見直すべき。田中さんが最初から似ていたのは知っていたので、手直しをさせた発言は、利権がズブズブだって証明するようなものよ・・・」
「そうだ、そうだ、ソーダー割・・・」
「もうええから、そのダジャレ、やめとき・・・」
「新国立、あたいは、ザハ案を支持します。あの流線型のデザインは世界でも例を見ない、画期的な建物になるはずよ。建築費は総額の一、二割で問題ないって。あとサブトラックの案も追加して欲しいわよね」
「サニブラウン頑張ったね。ガトリンもボルトも絶賛しているみたい」
「200mの銅の末次や5000&マラソンの銅の千葉真子は立派だった・・・」
「あらためて新国立競技場はオリンピックの聖地だといいたいし、陸上競技は原点なんだね。え、屋根を木造にする?
「信じらんない~い」
「ミホの元彼は400mのイケメン選手だったのよ。病気で亡くなった・・・」
「想いがあるわけね・・・・・」
「だから新国立は立派に作って欲しいわけよね。マッサン、あたいたちの想い分かってくれた?」
「わかった、船橋に伝えるよ・・・」
僕は銀座通りを後にした。











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by kandytensui | 2015-08-27 14:45

「はい、こちら2020東京五輪」
"Yes, this, 2020 Tokyo Olympics"


<登場人物>

・僕:中山正輝
・妻:恵理子
・長女:千鶴
・同僚:船橋真吾(次期社長)
・同僚の妻:美智子夫人
・同僚の絶世の美女:みどり君
・銀座マネキン嬢:ユキ、ナオミ、サトミ、ミキ他
・美大の後輩:安藤
・広告会社会長:広瀬弘文「(美智子夫人の父)
・銀座の若旦那他
・霞ヶ関官僚、国会議員他
・その他随増殖・・・


character>

* I: Masaki Nakayama.
* A wife: Eriko
* Eldest daughter: Chizu
* A colleague: Shingo Funabashi (the next president)
* Colleague's wife: Mrs. Michiko
* Colleague's peerless beauty: Mr. green
* Miss Ginza mannequin: Yuki, Naomi, Satomi and Miki and others
* Junior of art school: Ando
* Advertising firm chairperson: Hirose Kobun " (Mrs. Michiko's father)
* Young master other ones in Ginza
* Kasumigaseki bureaucrat and congressman and others
* The hokazui multiplication...





第一章 透明慕情(プロローグ)



 みどり君が都内の私立中学に入って以来、毎朝、駅ではいつも一緒になる。エリートの舟橋君と僕は勤務先では同期入社でもある。彼とは銀座の広告代理店までは通勤が一緒になる。しかし近々彼は役員にともっぱらの噂だ。彼との電車通勤も、そろそろお別れのようである。そういう縁があって、千鶴と彼の長女みどり君も、四谷の学校では中学から同じである。娘の千鶴も、みどり君とは朝の時間帯だけは一緒になる。
 まだ、午前六時台というのに、駅の中はいつも混みあっている。同じ発車時間と同じ白線の位置。通勤・通学客で駅のホームでは大抵、いつもと同じ顔ぶれになる。
 電車を待つ間、乗降客とは別段話をするわけでもない。今日はどうも気が乗らない。体の調子も悪そうだし、仕事を休みたい。勝手にそう思いはじめている。僕の性悪な癖は直りそうもない。そうこう思い込んでいるうちに、仮病のつもりがほんとに体調も悪くなってくる。悲哀や哀愁を放つプラットホームの人の波。僕は駅でそれを肌で感じとる。僕はその人たちと不安な時代を泳いでいる。僕は妙に思い込みが強いようだ。千鶴や妻恵理子にも言われる。僕は大人びた人間を見ると、うらやましく思える。よくもまぁ、年齢不相応な中年になったものだ。おまけに風変わりなご主人様ときている。それは今に始まったことではない。妻はそれを承知で僕と一緒になったのだ。世間が厳しいことを知らない純情無垢な貧乏画学生を口説き落として、親との縁を切ったほどだから、妻も引くに引けないのである。貧乏なくせに生活感がまったくないと見られている。そこが気に入られたのだろう。いわゆるせこせこしていない。おおらか。悪く言えばいい加減で存在感がない。しかし母性本能をくすぐる。癒し系。未だに彼女は実家の両親とは仲が悪い。近頃僕は開き直ったせいもある。内心とは裏腹に、僕の表情はノー天気に見えるようだ。最近、彼女たちが僕に腹が立つのも理解できるようになった。
 すみません、ちょっと火を貸していただけませんでしょうか、などと、プラットホームの指定された喫煙所で煙草をふかす。煙を見る一瞬は、僕には至福の時なのである。同じような人を見ていると、僕は何となくホッとしている。 嫌煙者の怖い視線は、青いレーザービームのように思える。それが肩身の狭い喫煙者との間に沈黙のわだかまりを生んでいる。家では禁煙宣言をして三年にもなる。家で彼女たちと顔を合わすときは、喫煙のきの字も表には出さない。表向き意志の固い主人さまのようだ。だが、彼女たちには、喫煙の罪状がばれているかもしれない。言葉の節々で勘ぐっている様子が顕著になっているからである。それでも僕はしらを切る。今では臭いのしない軽いタバコが流行っている。外で吸い過ぎたときは、臭い消しのためによく居酒屋に行き、焼鳥やニンニク入りの料理をよくつまむ。彼らは僕らを罪人の群れとでも言いたげである。人の目をはばかる喫煙者同士には、妙な連帯感が発生する。僕はその真っ只中にいる。そういう緊張感を僕は意外と楽しんでいるのである。
 単純な話なのだが、プラットホームは僕にとって一日のスタートラインになっている。彼らの表情には疲れた生活感がある。僕にはその哀愁がなんとなく安堵感につながるのである。
 私服通学のみどり君は、中学入学時から僕とは顔なじみで、思春期の身体の変化が手に取るように伝わってくる。余計なお世話だが、みどり君の家ではもうお赤飯でお祝いでもしたのだろうかとか、男友達は出来たのだろうかとか、勉強やクラブはうまくやっているだろうかとか、僕は彼女の事が気になっている。みどり君はもう高校生になった。時が経つのは早いものである。
 舟橋真吾君と僕は同期ではあるが、今では彼は雲上の人となった。だが、仕事を離れればごく普通のつき合いである。入社してからは、もうかれこれ二十年近くにもなる。化粧品会社でエリートの彼は、もはや最高責任者へ手の届く位置にある。彼の細君は会長の姪にあたり、将来は約束されたようなものである。次期社長の椅子は彼のすぐ目の前にある。派閥争いにも勝利した模様だ。明らかに社内の中では、彼への嫉妬心が膨らんでいる。近々舟橋君も社長になったら、運転手つきの車で通勤するのだろう。そういう噂も多く流れるようになった。
 だが、僕だって負けてはいられない。肩ひじ張ったつもりで、目下窓際族のエリートと意気がってはいる。自然な立ち回りを装っても、決して自然体ではない。だから、いつもやることなすことが、空回りをしている。自分自身が面白おかしく見えることがある。しかし正直言って、僕は時折心もとない。以前、会長の秘書と仲良くなったはずみで、彼の機嫌を損ねてしまったのだ。おそらく会長は自分の女に悪い虫がついたと、勘ぐってでもいたのだろう。会長に睨まれた僕は後がない。僕は悪い虫がどっちかわからないまま、次の日には早速、営業部から資料室へと栄転させられた。たしか舟橋君も、その美人秘書とは仲が良かったはずである。
 銀座の某所で時折、二人が密会しているところを篠山が見ている。舟橋君は以前からプライドが高い。自分からは悩みを人に打ち明ける等ということはなかった。だが、最近は弱音を吐くようになってきた。僕はいつも聞き役である。実質的に、彼は婿養子のようなものである。眼に見えないところで、美智子夫人の手のひらで踊っている。そういう鬱積が時折僕に向けられる。 
 下手をすれば、舟橋君もそのうち、社長抜擢どころか、社内ではお蔵入りとなるかも知れない。仕事上の地位など一寸先は闇なのである。舟橋君は細君にはまだバレてはいないから、しばらくは安泰だろう。しかし、油断は禁物である。貞淑で潔癖症であるかれの細君は、女帝になれる資格は充分である。気まずいことが発覚すれば、舟橋君の命は危うい。これでも、互いに同じ年ごろの娘を持つ親なのである。十代の少年が急に三十年後に飛来したような不思議な感覚を抱くことがある。初恋の味がなつかしい。でも、また味わえそうな、そうでもないような、不安も存在している。みどり君に対して、十代のような清純で不安定な自分になれるだろうか。ふわふわとした涼しい空気が体の中を突き通した。背筋にもぐんと力が入ってくる。
 資料室は、以前から妖怪の凄む動物園と名を馳せていたところである。完全に本流から外れた仲間たちは、意外と面白いキャラクターばかりである。これじゃ、みんな使い物にならないだろうなぁ、と以前から思っていた僕も、いざ来てみるとやっぱりそう思ってしまう。自分のことも含めて。
 資料室は二十人もの所帯だが、毎日結構楽しくやっている。何処で勘違いをされたか今もって僕には分からないが、資料室のスタッフたちは、みんな自分は特別な存在だと思っているらしい。資料室特有の暗い影などみじんも感じないのである。鬱病になるどころかいつも過激な躁状態で、関連会社の社員には、時折華の営業部隊と間違えられることもある。確かに自己陶酔と個性の強すぎる集まりだから、一般社員たちからも煙たがられてはいる。一般社員のみんなは、腫れ物には触らないように、エサをあげないように、という視線を送ってくる。でも僕にとっては快適な場所なのである。
 出勤簿は判を押すだけ。タイムカードはなしで、自己申告。日中の資料集めは何処へ行っても自由。そのまま理由をつけて、競馬、競輪や映画、パチンコなどにいき、資料探しだといって嘘の連絡をしても、立派な仕事になる。つまり、彼らに言わせれば自由な部署ということになる。資料室の男女の比率は半々位である。女はみんな独身で、男との噂はこれまで皆無だという。部署の男達は彼女たちをあっ、女の子だ、などと絶対認めようとしない。二十代や三十代までの濃すぎる化粧までは、まだ許せる。しかし、その上の熟女となると男達は皆恐怖におののく。
 彼女たちの化身した形相と、年期の入った縮れた髪。若い人向けのアイシャドウや茶髪などの真似をする。やめておけばいいものを、そのほうがいいよ絶対に、という視線は男達の間では挨拶代わりになっている。そういう面では結構気をつかうが、あとは余計な気は一切使わない。社交辞令でも褒め言葉などは吐いてはいけない。異性とみてはいけないのである。各自が自分の身を守るために。そういう無言の掟があった。間違って出そうものなら、たぶん生きて家へは帰れない。
 男たちは半数は既婚だが、長続きしているのは僕と篠山だけである。ほとんどがバツ一からバツ三のうちに入る。資料室の世代は二十代から五十代で幅がある。仕事がヒマな上に気楽な毎日は、遊び人風な僕をさらに勢いづけている。妻には広報室で采配を振るっていると嘘をついている。総務部で刷り上がった名刺を、勝手に作り替えて妻には立派にみせる。そういう小心さで、僕はかろうじて、心身のバランスを取っているのである。
 みどり君のあどけなかった顔と身体が、少しずつ少女から大人の女へと変わっている。その過程を垣間見るのは僕だけの、楽しみの一つになっている。
 美貌と知性を持ったみどり君には、早く妖気な女へ脱しようとする焦りを感じることがある。僕と彼女とは中学入試の試験日で初めて顔を合わせた。僕は年甲斐もなく、あどけない少女に妙にわくわくしていたものである。妻などにはそんなことは言えるわけがない。ロリコン趣味だと罵倒されるのがオチである。だが、僕のみどり君への慕情は、少しずつ芽生えつつある。
 みどり君も僕を意識しているのが分かるようになった。油断は大敵。好事魔多し。白昼の死角。少女への倒錯。僕はそんなことを、とめどなく歩きながら考える。
 僕はみどり君と視線をあわせると、彼女の心臓のなかに入っていくような、全てを許してもいいというような、雰囲気になってしまうのだ。軽はずみな男女の関係という意味ではない。素直な相手への想い。それだけである。初めてみどり君を見たとき、僕の気持ちの中では初恋のようなオアシスが、年甲斐もなく出来ていたのである。それはみどり君に対する僕の身勝手な、陶酔磁場であるには違いない。要するに僕は少女を見初めてしまったのである。みどり君もその時は、たしかそういう眼をしていた。あとで知ったことだが、みどり君の初恋の相手が僕だったのである。
 日頃みどり君とはあまり話し合うこともなく、時折学校の行事のとき、僕はみどり君に会えるというだけで、心が弾んでいた。文化祭では、みどり君の所属するマンドリン・ギター班をもう三年も聴いている。マンドリンの演奏もうまくなっていた。発表会前の編曲や曲選び・練習は大変らしい。妻と一緒に大講堂の席には座るが、僕はみどり君のことしか見えていない。妻に話しかけられても上の空である。みどり君とはいつもアイコンタクトで会話をする。最初のころはよく分からなかったが、近頃は目で分かるようになった。妻などそういうことは知る由もない。千鶴は器械体操班に所属している。妻は公開練習を見に行くといって中座したのにも全く気付いていない。軽く会釈をするだけなのに、僕はみどり君と秘密の世界を、共有している錯覚に陥ることがある。そんなことは死んでも人に話すわけにはいかない。自分の事は自分で悩むしかないのだ。少女への淡い想い。世間的に言うと近頃僕はかなり、アブナイおじさんになった様な気がする。僕にも同じ年頃の娘、千鶴がいるというのに。
 みどり君と千鶴はプロテスタントの同じ学校に通っている。だが、どういう訳か、彼女と千鶴は当初からあまり仲は良くないようである。みどり君からは誘いの電話は度々あったのだが、千鶴のほうはその都度理由をつけて避けようとしている。これまで一緒に通学したことはない。男には分からない女の領分でもあるのだろう。たしか、中学入試ではみどり君はトップの配点での入学組のようである。中学の受験塾では、いつもベストテンに名を連ねていた。千鶴のほうはと言えば、目を覆いたくなるような成績で、塾の担任の話ではとても無理と言われていた。
 中学受験は競争が激しい。偏差値がべらぼうに高くても、それだけ、憧れの志望校に入りたい少女達が、周りには結構いるということなのだろう。受験前は火事場の馬鹿力と運を見方にするべく、妻と千鶴はよくげんを担いでいた。早朝、二人でよく散歩をしていたが、飼い犬を連れ添っている老夫婦のあとを付け、御犬様がウンチをこぼしたら汚れた運動靴でそれを踏む。よしこれで、少しはウンがつくわと、たわいもない事を朝の食事中に話すのである。そんな中では食事が咽を通るわけがない。そういうことが、受験一ヶ月前から始まっていた。その間僕は朝食抜きで、出勤する羽目になる。
 みどり君の父方は見た目は野獣系のようだ。母方は絶世の美女系である。舟橋君の奥方やみどり君をみればすぐ分かる。
 僕は四十代のニューハーフ系である。妻はどちらかといえば野猿系に入る。千鶴は僕の美形の遺伝子はあるものの、見た目は絶対に母親似で、家ではあまり女を感じることはない。母子共に少しは上品度が上がればいいのだが、いっこうに上がる気配はない。Jリーグの試合では二人はいつも顔中に絵の具を塗って周りのサポーターたちとよく出かける。僕がそのままでも結構さまになるようだよ、と冗談交じりに言うと、その日の僕は食事には絶対ありつけない。 
 そういう力関係も存在するので、最近言葉には気をつけている。千鶴はお転婆と男勝りを掛け合わせたような性格で、家の中はいつも騒々しいのである。妻もそれに輪をかけていつもじっとしていることがない。時折僕は、我が家はレンタル家族のような気がしてくる。
 千鶴はたぶん最低点での補欠組である。いまだに、みどり君にはかなりのコンプレックスをもっている。松竹梅の松の下というところか。親の方も多分無理をしてもやはり松の下辺りだろう。カエルの子はやっぱりカエルなのである。 
 あとは千鶴本人の突然変異を期待するしか道はない。舟橋君は梅の中ぐらいか。千鶴は他の志望していた学校では、全て不合格。仕方がないから近くの公立にでも、お世話になろうかと手続きしていたときだった。制服も用意するものも全てそろっていた。
 ところがその日の深夜に、みどり君の学校から連絡が入る。補欠の繰り上がりで対象になったので、中山正輝様のお嬢さんを是非当校へのご入学いかがですかと電話が入った。僕はよくあるイタズラの電話だと思い、もう結構ですからとガチャンと電話を切ってしまった。当時、嫌がらせや勧誘の電話がめっぽう多くなっていたときであったからである。僕も酩酊して帰宅したばかりだった。家族のみんなも完璧に諦めていた。
 風呂場から急いで電話に出ようと、裸のまま廊下を走ってきた千鶴は、僕を不審な男と見誤ったらしく、大声を隣中にだした。駆けつけた隣家の住人達も、目のやり場が無く、しばらく唖然と立ちすくんでいた。千鶴は陰毛や膨らみ始めたおっぱいなどを、隠す恥じらいなどはまったくない。それどころか自分は女じゃない、というような千鶴の立ち振る舞いに、さぞかし彼らは背筋が筋が寒くなっていたことだろう。
 僕も娘も少しは妻に似てきたな、と思うぐらいそっけなさを顔に出す。みどり君とは全く違うのである。僕は千鶴に急所を思いっきり蹴られた。僕は千鶴には深夜の電話に出たことを言いながら失神していた。千鶴は何で学校断わったのと泣きじゃくる。千鶴はその出来事以来、僕には他人行儀になっていた。生理がいつから始まったのかと、親として聞ける温和な家庭ではないのである。もし、そんなことを少しでも口になどしたら、必ず刑事事件が勃発する。翌日の朝刊の社会面ではしっかり名前が載るだろう。
 三日後、電話のあった学校から、入学手続きの書類が送られてきた。千鶴は、たしか父が入学を断ったのでは、と学校に確認したところ、僕が、それで結構です、と言ったというのである。
 私は勘違いをして、結構ですといったばっかりに、それまでは千鶴や妻と会話が途切れてしまっていた。魔の三日間。このときは日本語の深い曖昧さと有り難さが身にしみていた。
 なにはともあれ、千鶴は補欠だけれども、憧れの学校に入学できた。入れる確率がほとんどない位の学校に入れたのだ。
 みどり君と千鶴には、何処かに目に見えない女の確執が存在する。たまには駅までは一緒にと、僕も娘にせがまれることがある。ただし、条件付きである。千鶴は僕には何時も他人のふりをしてと言われる。話しかけてもいけない。千鶴は、一種風来坊のような、怪しい親父にはいつも辟易しているのである。僕を二代目寅さんとでも、学校でも言いふらしているようだ。みどり君もチラッと、そんなことを口を滑らしたことがある。義理と人情の様なものが娘でも少しはあったのだと、僕はただ喜んでばかりではいけないのである。駅についた途端、娘から内緒で臨時の小遣いをせがまれる。それに呼応する僕も僕である。
 バブリーで男勝りの我が娘に女を感じろと、いうのはどだい無理な話しなのである。千鶴に女の魅力を感じるまでは、かなり時間がかかりそうである。妻の真智子もそう感じているはずだ。




第二章 2020東京オリンピック開催決定


 時が過ぎるのは早いものだ。船橋君の自慢の娘、みどり君は国立の女子大を首席で卒業し、わが娘の千鶴は大学を諦めて文科省の傘下の日本スポーツ振興センター(JSC)で働いている。みどり君は都庁に入り、2020東京オリンピック開催決定後、オリンピック準備委員会のメンバーとなり、日々忙しそうである。このところ、新国立競技場の建設費・デザイン、エンブレム盗作疑惑問題やらですったもんだしている様子だ。いまのところみどり君も冷静さを保ってはいる。が、いつ、フラストレーションが炸裂するかは分からない。千鶴だって、天下りの団体でこき使われ、不満たらたらの毎日なのだ。妻の恵理子は我関せずと、絵本作家のイバラの道を歩いている。船橋君は広告代理店の社長になり、僕は細ぼそと小説家を目指して、ボランティアをしながらの毎日だ。だから、我が家は、千鶴が生活の大黒柱となる。彼女の機嫌をそこねると家中大戦争となるのだ。船橋君は僕とはエンターテインメントへの志向が同じで、個人的なグルメの取材に誘ってくれている。貧乏人の僕にはありがたいことだ。妻恵理子は十年前に乳がんを患い、治療費も重くのしかかる。船橋君には時折温かい支援も受けているが、そのうち印税でも入ったら、思う存分恩にむくいたいところだ。まだまだ道は遠いが、継続こそ力なりと、自分には言い聞かせていいる。船橋君も励ましてくれるので嬉しくもなる。これは誰にも言えないことだが、銀座のマネキン嬢たちと会話する特技もあるので、悩んだときは彼女たちの助言をあおぐこともある。マネキン嬢が話すわけでもないのに。やはり、僕は正真正銘の変わり者なのだ。


 大変なことになった。船橋君がトップである広告会社と取引のあるデザイン会社が、盗作疑惑で混乱しているらしい。彼のことだ。結構信義を重んじる性格で、誰に対しても面倒見がいいから、普段は絶対他言はしない。僕にもだ。だが、今回だけは、五輪のイベントと言う国際的なものだけに、無名の作家の僕にも相談には来る。言いたいことを何でも話し合える仲なのである。男同士の変な友情。今日は表参道のハワイアン・コーヒー店で待ち合わせた。この店に入ると、コーヒーの香りがするアロマの別世界だ。ほとんどがうら若き女性たちだ。こういう店はあまり人には紹介したくない。ハワイ通の船橋君の紹介なのだが、本場の良質のわき水を使ったコーヒーは格別である。店員さんも感じはいい。原宿には合っている。船橋君が来るまで、先にコーヒーを嗜む。息を切らしながら彼が来た。
「中山、千鶴お嬢ちゃんはどうした?みどりから聞いたんだが、JSC大変そうじゃん。エンブレム制作者の佐野君が盗作疑惑でさ。ベルギーの劇場からクレームが来ててね」
「それは、みんな知ってるよ・・・」
「彼の言うには僕は知らないが、スタッフがやったかも知れないので調査中。内部のものがやったにしても、全部僕の責任。でも、すぐ認めるといろいろと大変なので。船さんTV局に付き合ってよ~、って、さっき終わったところ」
「サントリーも大変そうだね~」
「良い解決方法でもあればねぇ、いいんだけどさ。スタッフの盗用認めたようだ。そうだ、おまえに頼みがある・・・」
「そうくると思ったよ・・・。相談してみる・・・」
僕が相談する相手とは・・・。あまり人には言えない。。。




 このところ、みどり君が毎日タクシー帰りだという。JSCが文部科学省の下にあり、お互い不信感がたかまっているらしい。新国立競技場の計画でもすったもんだしているし、五輪のエンブレム盗用疑惑でベルギーのデザイナーがIOCに提訴したことから、差し止めになる公算が大きいというのだ。その劇場はベルギーの王室と関わり合いがあるという。ましてや、裁判はベルギー国内である。勝ち目はない。IOCでもベルギーに右ならいという可能性もある。見切り発車の五輪エンブレムは既に、大量のギャランティが発生し、オフィシャルスポンサーも企業広告で使っていることから、やり直しは、どういう影響を与えるか心配だ。五輪は大手の広告会社電通が窓口になっているらしい。そこの社員が五輪組織委員会のメンバーで、クリエイティブディレクターとしての地位である。にもかかわらず、窓口である彼が、佐野アートディレクターに発注。その佐野君に盗用疑惑が拡散。佐野君を採用した責任はクリエイティブディレクターにあるわけなのだが、いまだに釈明の会見はない。胴元の電通がするわけはないだろう。それだけ、広告の業界は魑魅魍魎としているのである。なんでもありの世界。だから、第三種郵便不正の企画を企業に出してしまう、モラルのない世界も確かに存在する。都庁の五輪準備委員会のスタッフであるみどり君は船橋君の一人娘なのだが、彼の細君は実質的に社の会長職であることから、日々多忙で帰宅してもいない時が多い。父である前会長の実家(吉祥寺の豪邸)から黒塗りの専用車で出社の毎日だからである。ということから、船橋君は社長でありながら決裁権は細君ということになる。だから、僕とは物理的な自由な時間はいくらでもある。要するに、細君のサポーター、入り婿のようなものだ。船橋君は大学では優秀だった。ぼくとは全く違う。だが、日々の苦労は僕のほうが優っている。と、僕はそう思わないと気負けする。しかし、生活感を一切人に与えない。50代になっても独身貴族に見られる所以である。本質的にはいわゆる負け犬の近吠えである。懐は大きいが気が弱すぎる。でも、なんでも体当たりで臨むから、はたから見れば、感動を与える得な性格なのだ。家計は苦しくても裕福に見られる。いや、そう言われれば、損な人間かも知れない。損な性格といえば、佐野君の方が上かも知れない。船橋くんから連絡が入った。月に二回は彼に誘われて、エンターテインメントレストランの取材に同行している。もうかれこれ、五年くらいになるから、かなりの数に上るが、彼と話していると楽しくもあり、時にはアドバイスもしてくれる。頼もしい元同僚(以前僕が働いていた広告会社)である。水道橋の東京ドームに行く途中、MLBカフェで落ち合う予定だ。以前は、ベースボールカフェといって、MLBびいきの日本人が経営していて、テレビでも紹介されたのだが、最近米国のMLBカフェという大リーグ専門のレストランになったばかりである。早い話、米国本土の直営店になった。最初のころは、大賑わいで評判だった以前とは違い冷たい雰囲気だったが、経営者側も察知したらしく、いまでは、以前と変わらない雰囲気で客足も上々のようである。MLBカフェガールズの人気も上がっている。サービスもよく、彼女たちもいつメジャー化するかわらない。

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by kandytensui | 2015-08-21 09:19


村山元首相のいうとおり、安倍氏は談話を出す意味はなかった。
出す必要もなかったように思います。
文言をぼかしながら、随所に言葉を挿入しているけれども、
加害者としての謝罪とお詫びがなく、これをもって、
今後の世代は謝罪はしないという文言も入った。
現在の天皇は「深い反省」という前例のない謝罪をされ、
安倍氏は謝罪しなかったことに、米国のメディアは、
天皇と安倍氏の声明を対照的に扱っている。
日本の周辺国ならいざ知らず、
表向き同盟を結んでいる米国内からの、
安倍氏への批判には納得がいくものだ。
ドイツではヒトラーが亡くなり、国体は壊滅し、
ドイツ国民は新たな国作りを世界から後押しされた。
日本では最高責任者がそのまま座り続け、
国体は維持され、国民は苦難の道を歩みました。
昭和天皇は日本国憲法で戦前の皇室の保障を取り付け、
責任はとらなかった。
国民への本心は、マッカーサーの腹心ホイットニーの文書で、
あきらかになっていますが、安倍氏の祖父は、
大政翼賛会での中心的人物で、A級戦犯でした。
絞首刑を免除になった理由は未だにわからない。
安倍氏にそのDNAがあるかぎり、国民と周辺国・米国への、
加害者としての反省と謝罪は未来永劫することはないでしょう。




The difference between Mr. Abe's 70 year talk and the emperor's word.


There was no meaning that Mr. Abe takes out a talk as Murayama former prime minister said.
I think it wasn't necessary to take it out.
While shading a phrase, everywhere, a word is inserted.
With this with which an apology as a wrongdoer and an apology cry.
The phrase which doesn't apologize also entered in the generation of the future.
The present emperor does an unprecedented apology as "deep reflection".
The media which are USA in Mr. Abe's not apologizing?
Statement of an emperor and Mr. Abe is being handled contrastively.
A Japanese neighboring country, well, I don't know.
In USA which has formed an official union.
It's convincing in criticism to Mr. Abe.
Hitler passes away and destroys the National Athletic Meet in Germany.
The German people supported new nation building from the world.
A highest officer keeps sitting down just as it is in Japan.
The National Athletic Meet was maintained and the people walked the suffering way.
Emperor Showa installs prewar security of Imperial Household by the Constitution of Japan.
Responsibility wasn't taken.
The mind to the country is MacArthur's document of confidant Whitney.
It becomes clear, Mr. Abe's grandfather?
I was the central figure by the Imperial Rule Assistance Association and was the A order war criminal.
The reason which became exemption doesn't understand the gallows yet.
To the limit, the country and neighboring country USA where Mr. Abe has the DNA.
An apology wouldn't make the future eternity reflection as a wrongdoer.

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by kandytensui | 2015-08-20 22:59 | 愛と勇気


日本人はいつからイメージ力が劣化・退化してきたのか。
おそらくWindowsやMacで
制作を手がけるようになってからでしょうか。
今はプロでなくても、五輪エンブレムやロゴの制作は、
誰でも作れる時代になっているからでしょうか。
ソフトのイラストレーターとフォトショップがあれば、
なんでもできるこの頃です。
youtubeの素材だって簡単に作れるし、
プレゼンも自由にできる。
イメージがお金になりにくい時代だから、
薄利多売になり、模倣や引用や利権が派生する。
広告代理店が佐野氏を紹介し、
窓口(胴元)になっているはずですが、
その報道はストップされてるのも問題。
TV局を管理しているのは広告代理店だから仕方が無いのかも。
日本の最後の護送船団、放送業界。
以前ホリエモン氏がけしかけたけれども、
返り討ちになった。
そういう現実をしらなかった彼にも問題ですが。
言葉は悪いですが、いまの日本のシステムは、
江戸時代の吉原の女郎屋システムと似ています。
一般の日本人は売り飛ばされた囲い者、
取り仕切っているのは闇の代理店。
戦前の大本営のプロパガンダは、同盟通信社で、
今の電通さん。
共同通信も時事通信も深い親戚縁者の関係が、
いまの日本のシステムを握っている。
永田町や財界や官僚まで。
だから、日本を変えるのは外圧しかない。。。
話はそれましたが。
デザイン業界は、
いま一度アナログの世界に立ち戻ったほうがいいですね。
政治だけでなくクリエイティブでも世界から孤立するのは、
いただけない。


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by kandytensui | 2015-08-20 09:19

An Olympic emblem is an embezzlement problem, and I'm shaking.
Because there is no service mark right, IOC and JOC are saying safeness.
But when I conflict in something a copyright is when catching service mark right.
A copyright is given priority to.
Anything given priority to most by production of a movie?
What and, it's good, a copyright as an original work.
When tracing the design, a thing as another work can be called, but when there is no origin, nothing will be done.
If so the first idea and image were expressed somewhere, it can be said inevitably occurrence of a copyright.
Everyone's sentences on which you're writing a blog and a picture are also defended by a copyright. When even Art also leaves an essay for music on the internet in youtube, even a novel generates your copyright naturally.
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by kandytensui | 2015-08-19 00:33
「はい、こちら2020東京五輪」
"Yes, this, 2020 Tokyo Olympics"


<登場人物>

・僕:中山正輝
・妻:恵理子
・長女:千鶴
・同僚:船橋真吾(次期社長)
・同僚の妻:美智子夫人
・同僚の絶世の美女:みどり君
・銀座マネキン嬢:ユキ、ナオミ、サトミ、ミキ他
・美大の後輩:安藤
・広告会社会長:広瀬弘文「(美智子夫人の父)
・銀座の若旦那他
・霞ヶ関官僚、国会議員他
・その他随増殖・・・


character>

* I: Masaki Nakayama.
* A wife: Eriko
* Eldest daughter: Chizu
* A colleague: Shingo Funabashi (the next president)
* Colleague's wife: Mrs. Michiko
* Colleague's peerless beauty: Mr. green
* Miss Ginza mannequin: Yuki, Naomi, Satomi and Miki and others
* Junior of art school: Ando
* Advertising firm chairperson: Hirose Kobun " (Mrs. Michiko's father)
* Young master other ones in Ginza
* Kasumigaseki bureaucrat and congressman and others
* The hokazui multiplication...





第一章 透明慕情(プロローグ)



 みどり君が都内の私立中学に入って以来、毎朝、駅ではいつも一緒になる。エリートの舟橋君と僕は勤務先では同期入社でもある。彼とは銀座の広告代理店までは通勤が一緒になる。しかし近々彼は役員にともっぱらの噂だ。彼との電車通勤も、そろそろお別れのようである。そういう縁があって、千鶴と彼の長女みどり君も、四谷の学校では中学から同じである。娘の千鶴も、みどり君とは朝の時間帯だけは一緒になる。
 まだ、午前六時台というのに、駅の中はいつも混みあっている。同じ発車時間と同じ白線の位置。通勤・通学客で駅のホームでは大抵、いつもと同じ顔ぶれになる。
 電車を待つ間、乗降客とは別段話をするわけでもない。今日はどうも気が乗らない。体の調子も悪そうだし、仕事を休みたい。勝手にそう思いはじめている。僕の性悪な癖は直りそうもない。そうこう思い込んでいるうちに、仮病のつもりがほんとに体調も悪くなってくる。悲哀や哀愁を放つプラットホームの人の波。僕は駅でそれを肌で感じとる。僕はその人たちと不安な時代を泳いでいる。僕は妙に思い込みが強いようだ。千鶴や妻恵理子にも言われる。僕は大人びた人間を見ると、うらやましく思える。よくもまぁ、年齢不相応な中年になったものだ。おまけに風変わりなご主人様ときている。それは今に始まったことではない。妻はそれを承知で僕と一緒になったのだ。世間が厳しいことを知らない純情無垢な貧乏画学生を口説き落として、親との縁を切ったほどだから、妻も引くに引けないのである。貧乏なくせに生活感がまったくないと見られている。そこが気に入られたのだろう。いわゆるせこせこしていない。おおらか。悪く言えばいい加減で存在感がない。しかし母性本能をくすぐる。癒し系。未だに彼女は実家の両親とは仲が悪い。近頃僕は開き直ったせいもある。内心とは裏腹に、僕の表情はノー天気に見えるようだ。最近、彼女たちが僕に腹が立つのも理解できるようになった。
 すみません、ちょっと火を貸していただけませんでしょうか、などと、プラットホームの指定された喫煙所で煙草をふかす。煙を見る一瞬は、僕には至福の時なのである。同じような人を見ていると、僕は何となくホッとしている。 嫌煙者の怖い視線は、青いレーザービームのように思える。それが肩身の狭い喫煙者との間に沈黙のわだかまりを生んでいる。家では禁煙宣言をして三年にもなる。家で彼女たちと顔を合わすときは、喫煙のきの字も表には出さない。表向き意志の固い主人さまのようだ。だが、彼女たちには、喫煙の罪状がばれているかもしれない。言葉の節々で勘ぐっている様子が顕著になっているからである。それでも僕はしらを切る。今では臭いのしない軽いタバコが流行っている。外で吸い過ぎたときは、臭い消しのためによく居酒屋に行き、焼鳥やニンニク入りの料理をよくつまむ。彼らは僕らを罪人の群れとでも言いたげである。人の目をはばかる喫煙者同士には、妙な連帯感が発生する。僕はその真っ只中にいる。そういう緊張感を僕は意外と楽しんでいるのである。
 単純な話なのだが、プラットホームは僕にとって一日のスタートラインになっている。彼らの表情には疲れた生活感がある。僕にはその哀愁がなんとなく安堵感につながるのである。
 私服通学のみどり君は、中学入学時から僕とは顔なじみで、思春期の身体の変化が手に取るように伝わってくる。余計なお世話だが、みどり君の家ではもうお赤飯でお祝いでもしたのだろうかとか、男友達は出来たのだろうかとか、勉強やクラブはうまくやっているだろうかとか、僕は彼女の事が気になっている。みどり君はもう高校生になった。時が経つのは早いものである。
 舟橋真吾君と僕は同期ではあるが、今では彼は雲上の人となった。だが、仕事を離れればごく普通のつき合いである。入社してからは、もうかれこれ二十年近くにもなる。化粧品会社でエリートの彼は、もはや最高責任者へ手の届く位置にある。彼の細君は会長の姪にあたり、将来は約束されたようなものである。次期社長の椅子は彼のすぐ目の前にある。派閥争いにも勝利した模様だ。明らかに社内の中では、彼への嫉妬心が膨らんでいる。近々舟橋君も社長になったら、運転手つきの車で通勤するのだろう。そういう噂も多く流れるようになった。
 だが、僕だって負けてはいられない。肩ひじ張ったつもりで、目下窓際族のエリートと意気がってはいる。自然な立ち回りを装っても、決して自然体ではない。だから、いつもやることなすことが、空回りをしている。自分自身が面白おかしく見えることがある。しかし正直言って、僕は時折心もとない。以前、会長の秘書と仲良くなったはずみで、彼の機嫌を損ねてしまったのだ。おそらく会長は自分の女に悪い虫がついたと、勘ぐってでもいたのだろう。会長に睨まれた僕は後がない。僕は悪い虫がどっちかわからないまま、次の日には早速、営業部から資料室へと栄転させられた。たしか舟橋君も、その美人秘書とは仲が良かったはずである。
 銀座の某所で時折、二人が密会しているところを篠山が見ている。舟橋君は以前からプライドが高い。自分からは悩みを人に打ち明ける等ということはなかった。だが、最近は弱音を吐くようになってきた。僕はいつも聞き役である。実質的に、彼は婿養子のようなものである。眼に見えないところで、美智子夫人の手のひらで踊っている。そういう鬱積が時折僕に向けられる。 
 下手をすれば、舟橋君もそのうち、社長抜擢どころか、社内ではお蔵入りとなるかも知れない。仕事上の地位など一寸先は闇なのである。舟橋君は細君にはまだバレてはいないから、しばらくは安泰だろう。しかし、油断は禁物である。貞淑で潔癖症であるかれの細君は、女帝になれる資格は充分である。気まずいことが発覚すれば、舟橋君の命は危うい。これでも、互いに同じ年ごろの娘を持つ親なのである。十代の少年が急に三十年後に飛来したような不思議な感覚を抱くことがある。初恋の味がなつかしい。でも、また味わえそうな、そうでもないような、不安も存在している。みどり君に対して、十代のような清純で不安定な自分になれるだろうか。ふわふわとした涼しい空気が体の中を突き通した。背筋にもぐんと力が入ってくる。
 資料室は、以前から妖怪の凄む動物園と名を馳せていたところである。完全に本流から外れた仲間たちは、意外と面白いキャラクターばかりである。これじゃ、みんな使い物にならないだろうなぁ、と以前から思っていた僕も、いざ来てみるとやっぱりそう思ってしまう。自分のことも含めて。
 資料室は二十人もの所帯だが、毎日結構楽しくやっている。何処で勘違いをされたか今もって僕には分からないが、資料室のスタッフたちは、みんな自分は特別な存在だと思っているらしい。資料室特有の暗い影などみじんも感じないのである。鬱病になるどころかいつも過激な躁状態で、関連会社の社員には、時折華の営業部隊と間違えられることもある。確かに自己陶酔と個性の強すぎる集まりだから、一般社員たちからも煙たがられてはいる。一般社員のみんなは、腫れ物には触らないように、エサをあげないように、という視線を送ってくる。でも僕にとっては快適な場所なのである。
 出勤簿は判を押すだけ。タイムカードはなしで、自己申告。日中の資料集めは何処へ行っても自由。そのまま理由をつけて、競馬、競輪や映画、パチンコなどにいき、資料探しだといって嘘の連絡をしても、立派な仕事になる。つまり、彼らに言わせれば自由な部署ということになる。資料室の男女の比率は半々位である。女はみんな独身で、男との噂はこれまで皆無だという。部署の男達は彼女たちをあっ、女の子だ、などと絶対認めようとしない。二十代や三十代までの濃すぎる化粧までは、まだ許せる。しかし、その上の熟女となると男達は皆恐怖におののく。
 彼女たちの化身した形相と、年期の入った縮れた髪。若い人向けのアイシャドウや茶髪などの真似をする。やめておけばいいものを、そのほうがいいよ絶対に、という視線は男達の間では挨拶代わりになっている。そういう面では結構気をつかうが、あとは余計な気は一切使わない。社交辞令でも褒め言葉などは吐いてはいけない。異性とみてはいけないのである。各自が自分の身を守るために。そういう無言の掟があった。間違って出そうものなら、たぶん生きて家へは帰れない。
 男たちは半数は既婚だが、長続きしているのは僕と篠山だけである。ほとんどがバツ一からバツ三のうちに入る。資料室の世代は二十代から五十代で幅がある。仕事がヒマな上に気楽な毎日は、遊び人風な僕をさらに勢いづけている。妻には広報室で采配を振るっていると嘘をついている。総務部で刷り上がった名刺を、勝手に作り替えて妻には立派にみせる。そういう小心さで、僕はかろうじて、心身のバランスを取っているのである。
 みどり君のあどけなかった顔と身体が、少しずつ少女から大人の女へと変わっている。その過程を垣間見るのは僕だけの、楽しみの一つになっている。
 美貌と知性を持ったみどり君には、早く妖気な女へ脱しようとする焦りを感じることがある。僕と彼女とは中学入試の試験日で初めて顔を合わせた。僕は年甲斐もなく、あどけない少女に妙にわくわくしていたものである。妻などにはそんなことは言えるわけがない。ロリコン趣味だと罵倒されるのがオチである。だが、僕のみどり君への慕情は、少しずつ芽生えつつある。
 みどり君も僕を意識しているのが分かるようになった。油断は大敵。好事魔多し。白昼の死角。少女への倒錯。僕はそんなことを、とめどなく歩きながら考える。
 僕はみどり君と視線をあわせると、彼女の心臓のなかに入っていくような、全てを許してもいいというような、雰囲気になってしまうのだ。軽はずみな男女の関係という意味ではない。素直な相手への想い。それだけである。初めてみどり君を見たとき、僕の気持ちの中では初恋のようなオアシスが、年甲斐もなく出来ていたのである。それはみどり君に対する僕の身勝手な、陶酔磁場であるには違いない。要するに僕は少女を見初めてしまったのである。みどり君もその時は、たしかそういう眼をしていた。あとで知ったことだが、みどり君の初恋の相手が僕だったのである。
 日頃みどり君とはあまり話し合うこともなく、時折学校の行事のとき、僕はみどり君に会えるというだけで、心が弾んでいた。文化祭では、みどり君の所属するマンドリン・ギター班をもう三年も聴いている。マンドリンの演奏もうまくなっていた。発表会前の編曲や曲選び・練習は大変らしい。妻と一緒に大講堂の席には座るが、僕はみどり君のことしか見えていない。妻に話しかけられても上の空である。みどり君とはいつもアイコンタクトで会話をする。最初のころはよく分からなかったが、近頃は目で分かるようになった。妻などそういうことは知る由もない。千鶴は器械体操班に所属している。妻は公開練習を見に行くといって中座したのにも全く気付いていない。軽く会釈をするだけなのに、僕はみどり君と秘密の世界を、共有している錯覚に陥ることがある。そんなことは死んでも人に話すわけにはいかない。自分の事は自分で悩むしかないのだ。少女への淡い想い。世間的に言うと近頃僕はかなり、アブナイおじさんになった様な気がする。僕にも同じ年頃の娘、千鶴がいるというのに。
 みどり君と千鶴はプロテスタントの同じ学校に通っている。だが、どういう訳か、彼女と千鶴は当初からあまり仲は良くないようである。みどり君からは誘いの電話は度々あったのだが、千鶴のほうはその都度理由をつけて避けようとしている。これまで一緒に通学したことはない。男には分からない女の領分でもあるのだろう。たしか、中学入試ではみどり君はトップの配点での入学組のようである。中学の受験塾では、いつもベストテンに名を連ねていた。千鶴のほうはと言えば、目を覆いたくなるような成績で、塾の担任の話ではとても無理と言われていた。
 中学受験は競争が激しい。偏差値がべらぼうに高くても、それだけ、憧れの志望校に入りたい少女達が、周りには結構いるということなのだろう。受験前は火事場の馬鹿力と運を見方にするべく、妻と千鶴はよくげんを担いでいた。早朝、二人でよく散歩をしていたが、飼い犬を連れ添っている老夫婦のあとを付け、御犬様がウンチをこぼしたら汚れた運動靴でそれを踏む。よしこれで、少しはウンがつくわと、たわいもない事を朝の食事中に話すのである。そんな中では食事が咽を通るわけがない。そういうことが、受験一ヶ月前から始まっていた。その間僕は朝食抜きで、出勤する羽目になる。
 みどり君の父方は見た目は野獣系のようだ。母方は絶世の美女系である。舟橋君の奥方やみどり君をみればすぐ分かる。
 僕は四十代のニューハーフ系である。妻はどちらかといえば野猿系に入る。千鶴は僕の美形の遺伝子はあるものの、見た目は絶対に母親似で、家ではあまり女を感じることはない。母子共に少しは上品度が上がればいいのだが、いっこうに上がる気配はない。Jリーグの試合では二人はいつも顔中に絵の具を塗って周りのサポーターたちとよく出かける。僕がそのままでも結構さまになるようだよ、と冗談交じりに言うと、その日の僕は食事には絶対ありつけない。 
 そういう力関係も存在するので、最近言葉には気をつけている。千鶴はお転婆と男勝りを掛け合わせたような性格で、家の中はいつも騒々しいのである。妻もそれに輪をかけていつもじっとしていることがない。時折僕は、我が家はレンタル家族のような気がしてくる。
 千鶴はたぶん最低点での補欠組である。いまだに、みどり君にはかなりのコンプレックスをもっている。松竹梅の松の下というところか。親の方も多分無理をしてもやはり松の下辺りだろう。カエルの子はやっぱりカエルなのである。 
 あとは千鶴本人の突然変異を期待するしか道はない。舟橋君は梅の中ぐらいか。千鶴は他の志望していた学校では、全て不合格。仕方がないから近くの公立にでも、お世話になろうかと手続きしていたときだった。制服も用意するものも全てそろっていた。
 ところがその日の深夜に、みどり君の学校から連絡が入る。補欠の繰り上がりで対象になったので、中山正輝様のお嬢さんを是非当校へのご入学いかがですかと電話が入った。僕はよくあるイタズラの電話だと思い、もう結構ですからとガチャンと電話を切ってしまった。当時、嫌がらせや勧誘の電話がめっぽう多くなっていたときであったからである。僕も酩酊して帰宅したばかりだった。家族のみんなも完璧に諦めていた。
 風呂場から急いで電話に出ようと、裸のまま廊下を走ってきた千鶴は、僕を不審な男と見誤ったらしく、大声を隣中にだした。駆けつけた隣家の住人達も、目のやり場が無く、しばらく唖然と立ちすくんでいた。千鶴は陰毛や膨らみ始めたおっぱいなどを、隠す恥じらいなどはまったくない。それどころか自分は女じゃない、というような千鶴の立ち振る舞いに、さぞかし彼らは背筋が筋が寒くなっていたことだろう。
 僕も娘も少しは妻に似てきたな、と思うぐらいそっけなさを顔に出す。みどり君とは全く違うのである。僕は千鶴に急所を思いっきり蹴られた。僕は千鶴には深夜の電話に出たことを言いながら失神していた。千鶴は何で学校断わったのと泣きじゃくる。千鶴はその出来事以来、僕には他人行儀になっていた。生理がいつから始まったのかと、親として聞ける温和な家庭ではないのである。もし、そんなことを少しでも口になどしたら、必ず刑事事件が勃発する。翌日の朝刊の社会面ではしっかり名前が載るだろう。
 三日後、電話のあった学校から、入学手続きの書類が送られてきた。千鶴は、たしか父が入学を断ったのでは、と学校に確認したところ、僕が、それで結構です、と言ったというのである。
 私は勘違いをして、結構ですといったばっかりに、それまでは千鶴や妻と会話が途切れてしまっていた。魔の三日間。このときは日本語の深い曖昧さと有り難さが身にしみていた。
 なにはともあれ、千鶴は補欠だけれども、憧れの学校に入学できた。入れる確率がほとんどない位の学校に入れたのだ。
 みどり君と千鶴には、何処かに目に見えない女の確執が存在する。たまには駅までは一緒にと、僕も娘にせがまれることがある。ただし、条件付きである。千鶴は僕には何時も他人のふりをしてと言われる。話しかけてもいけない。千鶴は、一種風来坊のような、怪しい親父にはいつも辟易しているのである。僕を二代目寅さんとでも、学校でも言いふらしているようだ。みどり君もチラッと、そんなことを口を滑らしたことがある。義理と人情の様なものが娘でも少しはあったのだと、僕はただ喜んでばかりではいけないのである。駅についた途端、娘から内緒で臨時の小遣いをせがまれる。それに呼応する僕も僕である。
 バブリーで男勝りの我が娘に女を感じろと、いうのはどだい無理な話しなのである。千鶴に女の魅力を感じるまでは、かなり時間がかかりそうである。妻の真智子もそう感じているはずだ。




第二章 2020東京オリンピック開催決定


 時が過ぎるのは早いものだ。船橋君の自慢の娘、みどり君は国立の女子大を首席で卒業し、わが娘の千鶴は大学を諦めて文科省の傘下の日本スポーツ振興センター(JSC)で働いている。みどり君は都庁に入り、2020東京オリンピック開催決定後、オリンピック準備委員会のメンバーとなり、日々忙しそうである。このところ、新国立競技場の建設費・デザイン、エンブレム盗作疑惑問題やらですったもんだしている様子だ。いまのところみどり君も冷静さを保ってはいる。が、いつ、フラストレーションが炸裂するかは分からない。千鶴だって、天下りの団体でこき使われ、不満たらたらの毎日なのだ。妻の恵理子は我関せずと、絵本作家のイバラの道を歩いている。船橋君は広告代理店の社長になり、僕は細ぼそと小説家を目指して、ボランティアをしながらの毎日だ。だから、我が家は、千鶴が生活の大黒柱となる。彼女の機嫌をそこねると家中大戦争となるのだ。船橋君は僕とはエンターテインメントへの志向が同じで、個人的なグルメの取材に誘ってくれている。貧乏人の僕にはありがたいことだ。妻恵理子は十年前に乳がんを患い、治療費も重くのしかかる。船橋君には時折温かい支援も受けているが、そのうち印税でも入ったら、思う存分恩にむくいたいところだ。まだまだ道は遠いが、継続こそ力なりと、自分には言い聞かせていいる。船橋君も励ましてくれるので嬉しくもなる。これは誰にも言えないことだが、銀座のマネキン嬢たちと会話する特技もあるので、悩んだときは彼女たちの助言をあおぐこともある。マネキン嬢が話すわけでもないのに。やはり、僕は正真正銘の変わり者なのだ。


 大変なことになった。船橋君がトップである広告会社と取引のあるデザイン会社が、盗作疑惑で混乱しているらしい。彼のことだ。結構信義を重んじる性格で、誰に対しても面倒見がいいから、普段は絶対他言はしない。僕にもだ。だが、今回だけは、五輪のイベントと言う国際的なものだけに、無名の作家の僕にも相談には来る。言いたいことを何でも話し合える仲なのである。男同士の変な友情。今日は表参道のハワイアン・コーヒー店で待ち合わせた。この店に入ると、コーヒーの香りがするアロマの別世界だ。ほとんどがうら若き女性たちだ。こういう店はあまり人には紹介したくない。ハワイ通の船橋君の紹介なのだが、本場の良質のわき水を使ったコーヒーは格別である。店員さんも感じはいい。原宿には合っている。船橋君が来るまで、先にコーヒーを嗜む。息を切らしながら彼が来た。
「中山、千鶴お嬢ちゃんはどうした?みどりから聞いたんだが、JSC大変そうじゃん。エンブレム制作者の佐野君が盗作疑惑でさ。ベルギーの劇場からクレームが来ててね」
「それは、みんな知ってるよ・・・」
「彼の言うには僕は知らないが、スタッフがやったかも知れないので調査中。内部のものがやったにしても、全部僕の責任。でも、すぐ認めるといろいろと大変なので。船さんTV局に付き合ってよ~、って、さっき終わったところ」
「サントリーも大変そうだね~」
「良い解決方法でもあればねぇ、いいんだけどさ。スタッフの盗用認めたようだ。そうだ、おまえに頼みがある・・・」
「そうくると思ったよ・・・。相談してみる・・・」
僕が相談する相手とは・・・。あまり人には言えない。。。
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by kandytensui | 2015-08-14 22:48
危うし東京五輪エンブレム。ギャランティー解消の可能性も。


日本のクリエイティブがここまで劣化しているとは、
正直思いたくありませんでした。
私も以前広告界に在籍していたものですから気にはなります。
彼はアートディレクターで、実際の制作はスタッフ?
ディレクターとして制作過程での調査や分析を怠ったか。
デザイン盗用は今のネット社会では、安易に走りすぎる傾向があり、
二次元の中では表現は無限にあるものの、偶然性は排除出来ません。
しかしながら、別の作品をそのまま使うというのは論外ですね。
クリエイタープロデューサーとしてはあり得ない。
レイアウトデザインやコピーでも同じです。
クリエイターは安易にネット社会でのコピーアンドテイストで、
参考の領域を超えて借用してしまった。
そういう印象ですね。
個人的なことですが、以前広告代理店で同僚が、
ある医療機関の広告のレイアウト(と文書まで)をそっくり真似て、
ある広告を新聞に掲載したことがあります。
後日広告主の医療機関から広告の文章を依頼された、
大学の先生から新聞社に指摘があり、レイアウトの盗用が発覚。
上司は長野の大学まで赴き、損害金600万円で示談。
広告の世界は盗用には厳しい。
2020東京五輪エンブレム問題では、
JOCに使用差し止めの書簡が届いているという。
五輪関係者も、「このままでは国内の世論も黙ってはいないだろう。
取り下げもあり得る」と思っているはず。。。
一番怖いのは、
「IOCが2020TOKYOの開催を取り下げるという決断を出すとき」
でしょう。
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by kandytensui | 2015-08-14 11:56
2020 Tokyo Olympic Games stadium problem.

The ZAHA Ms. who visited Japan by an awarding event of tournament adoption. Still when it isn't adopted, a new national institution would be a serious international problem. The ZAHA Ms. you employed isn't bad at all. A designer doesn't consider a construction cost so much. For example when also hitting the expenses with a repair estimate in an apartment, does how a general contractor adds the profit also seem able to hit with how much, and be not revealed? Because Mr. ZAHA took charge of the design, isn't it satisfied with the budget by which she's the first when making an improvement so that it may be called? The fact of the budget compression by which the one I had to spare is a stadium that a JSC building is built shouldn't be done. Because it was adopted at Democratic Party of Japan political power by an event of a national policy, a nerve of Mr. Abe who says is suspected to be unrelated for oneself. I'm a highest officer. I should cooperate with a ZAHA Ms.. When doing that, it'll be completed in March, 2019. It's never made of amateur's officer and politician. Idea should remove a Japanese architect and a major general contractor from SHOBO I. A close inspection of new national general contractor test is needed first. The participation of an athlete is empty by a new national institution and is just confused too much. There is obligation to gaze at overseas major media here and advise Japan.


2020東京オリンピックスタジアム問題。

コンペ採用の受章イベントで来日したザハ女史。それでも新国立は採用しないとなると、深刻な国際問題になるでしょう。採用されたザハ女史はまったく悪くない。建築費用云々はデザイナーがあまり考えるものではない。例えばマンションの改修見積もりでも、経費をたたけばいくらでもたたけるようで、ゼネコンがいかに利益を上乗せしているかが、判明するんじゃないでしょうか。。。ザハ氏がデザイン担当したのだから、彼女の言われるように手を加えれば当初の予算で収まるんじゃないでしょうか。JSCビルを新築する余裕があったのなら、スタジアムの予算圧縮の話などすべきではない。国策のイベントで、民主党政権の時に採用したのだから、自分には関係ないという安倍氏の神経を疑います。最高責任者なのですよ。ザハ女史と連携するべきです。そうすれば2019年3月には完成する。素人の役人・政治家では絶対できない。日本の建築家・大手のゼネコンは発想がしょぼいから外すべきです。まずは新国立ゼネコン試算の精査が必要。アスリートの参画は新国立では無意味、余計混乱するだけです。海外の大手メディアはここに注視して、日本にアドバイスする義務があります。
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by kandytensui | 2015-08-12 08:29
「はい、こちら2020東京五輪」



<登場人物>

・僕:中山正輝
・妻:恵理子
・長女:千鶴
・同僚:船橋真吾(次期社長)
・同僚の妻:美智子夫人
・同僚の絶世の美女:みどり君
・銀座マネキン嬢:ユキ、ナオミ、サトミ、ミキ他
・美大の後輩:安藤
・広告会社会長:広瀬弘文「(美智子夫人の父)
・銀座の若旦那他
・霞ヶ関官僚、国会議員他
・その他随増殖・・・





第一章 透明慕情(プロローグ)



 みどり君が都内の私立中学に入って以来、毎朝、駅ではいつも一緒になる。エリートの舟橋君と僕は勤務先では同期入社でもある。彼とは銀座の広告代理店までは通勤が一緒になる。しかし近々彼は役員にともっぱらの噂だ。彼との電車通勤も、そろそろお別れのようである。そういう縁があって、千鶴と彼の長女みどり君も、四谷の学校では中学から同じである。娘の千鶴も、みどり君とは朝の時間帯だけは一緒になる。
 まだ、午前六時台というのに、駅の中はいつも混みあっている。同じ発車時間と同じ白線の位置。通勤・通学客で駅のホームでは大抵、いつもと同じ顔ぶれになる。
 電車を待つ間、乗降客とは別段話をするわけでもない。今日はどうも気が乗らない。体の調子も悪そうだし、仕事を休みたい。勝手にそう思いはじめている。僕の性悪な癖は直りそうもない。そうこう思い込んでいるうちに、仮病のつもりがほんとに体調も悪くなってくる。悲哀や哀愁を放つプラットホームの人の波。僕は駅でそれを肌で感じとる。僕はその人たちと不安な時代を泳いでいる。僕は妙に思い込みが強いようだ。千鶴や妻恵理子にも言われる。僕は大人びた人間を見ると、うらやましく思える。よくもまぁ、年齢不相応な中年になったものだ。おまけに風変わりなご主人様ときている。それは今に始まったことではない。妻はそれを承知で僕と一緒になったのだ。世間が厳しいことを知らない純情無垢な貧乏画学生を口説き落として、親との縁を切ったほどだから、妻も引くに引けないのである。貧乏なくせに生活感がまったくないと見られている。そこが気に入られたのだろう。いわゆるせこせこしていない。おおらか。悪く言えばいい加減で存在感がない。しかし母性本能をくすぐる。癒し系。未だに彼女は実家の両親とは仲が悪い。近頃僕は開き直ったせいもある。内心とは裏腹に、僕の表情はノー天気に見えるようだ。最近、彼女たちが僕に腹が立つのも理解できるようになった。
 すみません、ちょっと火を貸していただけませんでしょうか、などと、プラットホームの指定された喫煙所で煙草をふかす。煙を見る一瞬は、僕には至福の時なのである。同じような人を見ていると、僕は何となくホッとしている。 嫌煙者の怖い視線は、青いレーザービームのように思える。それが肩身の狭い喫煙者との間に沈黙のわだかまりを生んでいる。家では禁煙宣言をして三年にもなる。家で彼女たちと顔を合わすときは、喫煙のきの字も表には出さない。表向き意志の固い主人さまのようだ。だが、彼女たちには、喫煙の罪状がばれているかもしれない。言葉の節々で勘ぐっている様子が顕著になっているからである。それでも僕はしらを切る。今では臭いのしない軽いタバコが流行っている。外で吸い過ぎたときは、臭い消しのためによく居酒屋に行き、焼鳥やニンニク入りの料理をよくつまむ。彼らは僕らを罪人の群れとでも言いたげである。人の目をはばかる喫煙者同士には、妙な連帯感が発生する。僕はその真っ只中にいる。そういう緊張感を僕は意外と楽しんでいるのである。
 単純な話なのだが、プラットホームは僕にとって一日のスタートラインになっている。彼らの表情には疲れた生活感がある。僕にはその哀愁がなんとなく安堵感につながるのである。
 私服通学のみどり君は、中学入学時から僕とは顔なじみで、思春期の身体の変化が手に取るように伝わってくる。余計なお世話だが、みどり君の家ではもうお赤飯でお祝いでもしたのだろうかとか、男友達は出来たのだろうかとか、勉強やクラブはうまくやっているだろうかとか、僕は彼女の事が気になっている。みどり君はもう高校生になった。時が経つのは早いものである。
 舟橋真吾君と僕は同期ではあるが、今では彼は雲上の人となった。だが、仕事を離れればごく普通のつき合いである。入社してからは、もうかれこれ二十年近くにもなる。化粧品会社でエリートの彼は、もはや最高責任者へ手の届く位置にある。彼の細君は会長の姪にあたり、将来は約束されたようなものである。次期社長の椅子は彼のすぐ目の前にある。派閥争いにも勝利した模様だ。明らかに社内の中では、彼への嫉妬心が膨らんでいる。近々舟橋君も社長になったら、運転手つきの車で通勤するのだろう。そういう噂も多く流れるようになった。
 だが、僕だって負けてはいられない。肩ひじ張ったつもりで、目下窓際族のエリートと意気がってはいる。自然な立ち回りを装っても、決して自然体ではない。だから、いつもやることなすことが、空回りをしている。自分自身が面白おかしく見えることがある。しかし正直言って、僕は時折心もとない。以前、会長の秘書と仲良くなったはずみで、彼の機嫌を損ねてしまったのだ。おそらく会長は自分の女に悪い虫がついたと、勘ぐってでもいたのだろう。会長に睨まれた僕は後がない。僕は悪い虫がどっちかわからないまま、次の日には早速、営業部から資料室へと栄転させられた。たしか舟橋君も、その美人秘書とは仲が良かったはずである。
 銀座の某所で時折、二人が密会しているところを篠山が見ている。舟橋君は以前からプライドが高い。自分からは悩みを人に打ち明ける等ということはなかった。だが、最近は弱音を吐くようになってきた。僕はいつも聞き役である。実質的に、彼は婿養子のようなものである。眼に見えないところで、美智子夫人の手のひらで踊っている。そういう鬱積が時折僕に向けられる。 
 下手をすれば、舟橋君もそのうち、社長抜擢どころか、社内ではお蔵入りとなるかも知れない。仕事上の地位など一寸先は闇なのである。舟橋君は細君にはまだバレてはいないから、しばらくは安泰だろう。しかし、油断は禁物である。貞淑で潔癖症であるかれの細君は、女帝になれる資格は充分である。気まずいことが発覚すれば、舟橋君の命は危うい。これでも、互いに同じ年ごろの娘を持つ親なのである。十代の少年が急に三十年後に飛来したような不思議な感覚を抱くことがある。初恋の味がなつかしい。でも、また味わえそうな、そうでもないような、不安も存在している。みどり君に対して、十代のような清純で不安定な自分になれるだろうか。ふわふわとした涼しい空気が体の中を突き通した。背筋にもぐんと力が入ってくる。
 資料室は、以前から妖怪の凄む動物園と名を馳せていたところである。完全に本流から外れた仲間たちは、意外と面白いキャラクターばかりである。これじゃ、みんな使い物にならないだろうなぁ、と以前から思っていた僕も、いざ来てみるとやっぱりそう思ってしまう。自分のことも含めて。
 資料室は二十人もの所帯だが、毎日結構楽しくやっている。何処で勘違いをされたか今もって僕には分からないが、資料室のスタッフたちは、みんな自分は特別な存在だと思っているらしい。資料室特有の暗い影などみじんも感じないのである。鬱病になるどころかいつも過激な躁状態で、関連会社の社員には、時折華の営業部隊と間違えられることもある。確かに自己陶酔と個性の強すぎる集まりだから、一般社員たちからも煙たがられてはいる。一般社員のみんなは、腫れ物には触らないように、エサをあげないように、という視線を送ってくる。でも僕にとっては快適な場所なのである。
 出勤簿は判を押すだけ。タイムカードはなしで、自己申告。日中の資料集めは何処へ行っても自由。そのまま理由をつけて、競馬、競輪や映画、パチンコなどにいき、資料探しだといって嘘の連絡をしても、立派な仕事になる。つまり、彼らに言わせれば自由な部署ということになる。資料室の男女の比率は半々位である。女はみんな独身で、男との噂はこれまで皆無だという。部署の男達は彼女たちをあっ、女の子だ、などと絶対認めようとしない。二十代や三十代までの濃すぎる化粧までは、まだ許せる。しかし、その上の熟女となると男達は皆恐怖におののく。
 彼女たちの化身した形相と、年期の入った縮れた髪。若い人向けのアイシャドウや茶髪などの真似をする。やめておけばいいものを、そのほうがいいよ絶対に、という視線は男達の間では挨拶代わりになっている。そういう面では結構気をつかうが、あとは余計な気は一切使わない。社交辞令でも褒め言葉などは吐いてはいけない。異性とみてはいけないのである。各自が自分の身を守るために。そういう無言の掟があった。間違って出そうものなら、たぶん生きて家へは帰れない。
 男たちは半数は既婚だが、長続きしているのは僕と篠山だけである。ほとんどがバツ一からバツ三のうちに入る。資料室の世代は二十代から五十代で幅がある。仕事がヒマな上に気楽な毎日は、遊び人風な僕をさらに勢いづけている。妻には広報室で采配を振るっていると嘘をついている。総務部で刷り上がった名刺を、勝手に作り替えて妻には立派にみせる。そういう小心さで、僕はかろうじて、心身のバランスを取っているのである。
 みどり君のあどけなかった顔と身体が、少しずつ少女から大人の女へと変わっている。その過程を垣間見るのは僕だけの、楽しみの一つになっている。
 美貌と知性を持ったみどり君には、早く妖気な女へ脱しようとする焦りを感じることがある。僕と彼女とは中学入試の試験日で初めて顔を合わせた。僕は年甲斐もなく、あどけない少女に妙にわくわくしていたものである。妻などにはそんなことは言えるわけがない。ロリコン趣味だと罵倒されるのがオチである。だが、僕のみどり君への慕情は、少しずつ芽生えつつある。
 みどり君も僕を意識しているのが分かるようになった。油断は大敵。好事魔多し。白昼の死角。少女への倒錯。僕はそんなことを、とめどなく歩きながら考える。
 僕はみどり君と視線をあわせると、彼女の心臓のなかに入っていくような、全てを許してもいいというような、雰囲気になってしまうのだ。軽はずみな男女の関係という意味ではない。素直な相手への想い。それだけである。初めてみどり君を見たとき、僕の気持ちの中では初恋のようなオアシスが、年甲斐もなく出来ていたのである。それはみどり君に対する僕の身勝手な、陶酔磁場であるには違いない。要するに僕は少女を見初めてしまったのである。みどり君もその時は、たしかそういう眼をしていた。あとで知ったことだが、みどり君の初恋の相手が僕だったのである。
 日頃みどり君とはあまり話し合うこともなく、時折学校の行事のとき、僕はみどり君に会えるというだけで、心が弾んでいた。文化祭では、みどり君の所属するマンドリン・ギター班をもう三年も聴いている。マンドリンの演奏もうまくなっていた。発表会前の編曲や曲選び・練習は大変らしい。妻と一緒に大講堂の席には座るが、僕はみどり君のことしか見えていない。妻に話しかけられても上の空である。みどり君とはいつもアイコンタクトで会話をする。最初のころはよく分からなかったが、近頃は目で分かるようになった。妻などそういうことは知る由もない。千鶴は器械体操班に所属している。妻は公開練習を見に行くといって中座したのにも全く気付いていない。軽く会釈をするだけなのに、僕はみどり君と秘密の世界を、共有している錯覚に陥ることがある。そんなことは死んでも人に話すわけにはいかない。自分の事は自分で悩むしかないのだ。少女への淡い想い。世間的に言うと近頃僕はかなり、アブナイおじさんになった様な気がする。僕にも同じ年頃の娘、千鶴がいるというのに。
 みどり君と千鶴はプロテスタントの同じ学校に通っている。だが、どういう訳か、彼女と千鶴は当初からあまり仲は良くないようである。みどり君からは誘いの電話は度々あったのだが、千鶴のほうはその都度理由をつけて避けようとしている。これまで一緒に通学したことはない。男には分からない女の領分でもあるのだろう。たしか、中学入試ではみどり君はトップの配点での入学組のようである。中学の受験塾では、いつもベストテンに名を連ねていた。千鶴のほうはと言えば、目を覆いたくなるような成績で、塾の担任の話ではとても無理と言われていた。
 中学受験は競争が激しい。偏差値がべらぼうに高くても、それだけ、憧れの志望校に入りたい少女達が、周りには結構いるということなのだろう。受験前は火事場の馬鹿力と運を見方にするべく、妻と千鶴はよくげんを担いでいた。早朝、二人でよく散歩をしていたが、飼い犬を連れ添っている老夫婦のあとを付け、御犬様がウンチをこぼしたら汚れた運動靴でそれを踏む。よしこれで、少しはウンがつくわと、たわいもない事を朝の食事中に話すのである。そんな中では食事が咽を通るわけがない。そういうことが、受験一ヶ月前から始まっていた。その間僕は朝食抜きで、出勤する羽目になる。
 みどり君の父方は見た目は野獣系のようだ。母方は絶世の美女系である。舟橋君の奥方やみどり君をみればすぐ分かる。
 僕は四十代のニューハーフ系である。妻はどちらかといえば野猿系に入る。千鶴は僕の美形の遺伝子はあるものの、見た目は絶対に母親似で、家ではあまり女を感じることはない。母子共に少しは上品度が上がればいいのだが、いっこうに上がる気配はない。Jリーグの試合では二人はいつも顔中に絵の具を塗って周りのサポーターたちとよく出かける。僕がそのままでも結構さまになるようだよ、と冗談交じりに言うと、その日の僕は食事には絶対ありつけない。 
 そういう力関係も存在するので、最近言葉には気をつけている。千鶴はお転婆と男勝りを掛け合わせたような性格で、家の中はいつも騒々しいのである。妻もそれに輪をかけていつもじっとしていることがない。時折僕は、我が家はレンタル家族のような気がしてくる。
 千鶴はたぶん最低点での補欠組である。いまだに、みどり君にはかなりのコンプレックスをもっている。松竹梅の松の下というところか。親の方も多分無理をしてもやはり松の下辺りだろう。カエルの子はやっぱりカエルなのである。 
 あとは千鶴本人の突然変異を期待するしか道はない。舟橋君は梅の中ぐらいか。千鶴は他の志望していた学校では、全て不合格。仕方がないから近くの公立にでも、お世話になろうかと手続きしていたときだった。制服も用意するものも全てそろっていた。
 ところがその日の深夜に、みどり君の学校から連絡が入る。補欠の繰り上がりで対象になったので、中山正輝様のお嬢さんを是非当校へのご入学いかがですかと電話が入った。僕はよくあるイタズラの電話だと思い、もう結構ですからとガチャンと電話を切ってしまった。当時、嫌がらせや勧誘の電話がめっぽう多くなっていたときであったからである。僕も酩酊して帰宅したばかりだった。家族のみんなも完璧に諦めていた。
 風呂場から急いで電話に出ようと、裸のまま廊下を走ってきた千鶴は、僕を不審な男と見誤ったらしく、大声を隣中にだした。駆けつけた隣家の住人達も、目のやり場が無く、しばらく唖然と立ちすくんでいた。千鶴は陰毛や膨らみ始めたおっぱいなどを、隠す恥じらいなどはまったくない。それどころか自分は女じゃない、というような千鶴の立ち振る舞いに、さぞかし彼らは背筋が筋が寒くなっていたことだろう。
 僕も娘も少しは妻に似てきたな、と思うぐらいそっけなさを顔に出す。みどり君とは全く違うのである。僕は千鶴に急所を思いっきり蹴られた。僕は千鶴には深夜の電話に出たことを言いながら失神していた。千鶴は何で学校断わったのと泣きじゃくる。千鶴はその出来事以来、僕には他人行儀になっていた。生理がいつから始まったのかと、親として聞ける温和な家庭ではないのである。もし、そんなことを少しでも口になどしたら、必ず刑事事件が勃発する。翌日の朝刊の社会面ではしっかり名前が載るだろう。
 三日後、電話のあった学校から、入学手続きの書類が送られてきた。千鶴は、たしか父が入学を断ったのでは、と学校に確認したところ、僕が、それで結構です、と言ったというのである。
 私は勘違いをして、結構ですといったばっかりに、それまでは千鶴や妻と会話が途切れてしまっていた。魔の三日間。このときは日本語の深い曖昧さと有り難さが身にしみていた。
 なにはともあれ、千鶴は補欠だけれども、憧れの学校に入学できた。入れる確率がほとんどない位の学校に入れたのだ。
 みどり君と千鶴には、何処かに目に見えない女の確執が存在する。たまには駅までは一緒にと、僕も娘にせがまれることがある。ただし、条件付きである。千鶴は僕には何時も他人のふりをしてと言われる。話しかけてもいけない。千鶴は、一種風来坊のような、怪しい親父にはいつも辟易しているのである。僕を二代目寅さんとでも、学校でも言いふらしているようだ。みどり君もチラッと、そんなことを口を滑らしたことがある。義理と人情の様なものが娘でも少しはあったのだと、僕はただ喜んでばかりではいけないのである。駅についた途端、娘から内緒で臨時の小遣いをせがまれる。それに呼応する僕も僕である。
 バブリーで男勝りの我が娘に女を感じろと、いうのはどだい無理な話しなのである。千鶴に女の魅力を感じるまでは、かなり時間がかかりそうである。妻もそう感じているはずだ。




第二章 2020東京オリンピック開催決定


 時が過ぎるのは早いものだ。船橋君の自慢の娘、みどり君は国立の女子大を首席で卒業し、わが娘の千鶴は大学を諦めて文科省の傘下の日本スポーツ振興センター(JSC)で働いている。みどり君は都庁に入り、2020東京オリンピック開催決定後、オリンピック準備委員会のメンバーとなり、日々忙しそうである。このところ、新国立競技場の建設費・デザイン、エンブレム盗作疑惑問題やらですったもんだしている様子だ。いまのところみどり君も冷静さを保ってはいる。が、いつ、フラストレーションが炸裂するかは分からない。千鶴だって、天下りの団体でこき使われ、不満たらたらの毎日なのだ。妻の恵理子は我関せずと、絵本作家のイバラの道を歩いている。船橋君は広告代理店の社長になり、僕は細ぼそと小説家を目指して、ボランティアをしながらの毎日だ。だから、我が家は、千鶴が生活の大黒柱となる。彼女の機嫌をそこねると家中大戦争となるのだ。船橋君は僕とはエンターテインメントへの志向が同じで、個人的なグルメの取材に誘ってくれている。貧乏人の僕にはありがたいことだ。妻恵理子は十年前に乳がんを患い、治療費も重くのしかかる。船橋君には時折温かい支援も受けているが、そのうち印税でも入ったら、思う存分恩にむくいたいところだ。まだまだ道は遠いが、継続こそ力なりと、自分には言い聞かせていいる。船橋君も励ましてくれるので嬉しくもなる。これは誰にも言えないことだが、銀座のマネキン嬢たちと会話する特技もあるので、悩んだときは彼女たちの助言をあおぐこともある。マネキン嬢が話すわけでもないのに。やはり、僕は正真正銘の変わり者なのだ。

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by kandytensui | 2015-08-07 09:14

by kurarin